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アートや芸術に関する映画やドキュメンタリーを集めました

アート映画
【おすすめ13本】芸術好き必見 アート映画・ドキュメンタリー情報まとめ
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総合芸術である映画には、映像・音楽・ファッションなどさまざまな芸術要素が含まれ、長い間多くの芸術家たちが活躍の場としてきました。

ここでは、斬新な表現で次世代の映画に影響を与え続ける傑作アート映画8本と、特に見どころがあり、今を映し出すことに成功している傑作アートドキュメンタリー5本を、厳選してご紹介。

広い視点からアートと映画の関係を眺められるよう、1957年から2017年までの60年間に発表され、さらに日本映画、フランス映画、スイス映画、ハリウッド映画…とさまざまな国のアート映画、ドキュメンタリー作品を幅広く選んでみました。

バリエーション豊かなアート映画やドキュメンタリーを鑑賞してみると、さまざまな芸術家が地震アイデアを埋め込むことで、新しい世界観の表現に挑戦しているのが伺えます。

著名な芸術家が参加している優れたアート映画を通して、映画とアートの関係を覗いてみましょう。また、アートを鋭く映しだすドキュメンタリー映画は、芸術作品が生みだされる背景や作家自身もアートの一部であることを、観る者に伝えてくるでしょう。

おすすめのアート映画8選

『蜘蛛巣城』(1957) 黒澤明×シェイクスピア×能の融合

シェイクスピア四大悲劇の一つ『マクベス』を、日本の戦国時代に置き換えて映画化。

日本文化を研究していたときに能に感銘を受けた黒澤監督が、西洋の物語と日本の伝統美を融合した作品です。

「人物の表情や動き・撮影・作品構成」に、意識的に能の様式美が取り入れられています。

霧が立ちこめる城の姿など、後の映画表現に大きな影響を与えました。

黒澤映画のカラー作品ではワダ・エミがアカデミー賞衣装デザイン賞を受賞した『乱』(1985)も、和の美しさと映像美が際立つアート映画です。

『時計仕掛けのオレンジ』キューブリックが描くウルトラバイオレンス (1971)

『時計仕掛けのオレンジ』は全体主義社会が台頭し、暴力とセックスなどへの欲望で荒廃した自由放任主義がまかり通るディストピアを描いた風刺劇的近未来SF映画。

非常に美しいプロダクションデザインを持つアート映画として知られ、巨匠スタンリー・キューブリック監督の代表作の一つになっています。

ミルクバーにある裸のマネキンテーブルとミルクディスペンサーは、60年代ポップアートのアイコンとして知られるアレン・ジョーンズによるマネキンの家具から着想を得てたものです。

造形を担当したのは『2001年宇宙の旅』のスターチャイルドや、『スター・ウォーズ』のストーム・トゥルーパーをデザインした天才造形アーティスト、リズ・ムーア。

音楽も印象的な本作ですが、シンセサイザーによるベートーヴェンなどのクラシック音楽を担当したのは、グラミー賞受賞作曲家ウェンディ・カルロス。

本作はアカデミー賞で作品賞含む4部門にノミネートされたほか、ヒューゴー賞など数々の映画賞を受賞しています。

『エイリアン』シリーズとギーガーのダークワールド

『エイリアン』(1979)、『エイリアン2』(1986)と世界的大ヒットを放ったSFホラー映画の金字塔。

これらエイリアンの造形デザインを手がけたのは、モノトーンでグロテスクかつダークな世界観を表現するスイス人画家H・R・ギーガー。

スイスを代表するアーティストであるギーガーは、1作目『エイリアン』でアカデミー賞特殊効果賞を受賞しました。

現在はシリーズ1作目のリドリー・スコット監督がメガホンをとり、前日譚(プリクエル)としてリブートした新シリーズ3部作を製作中です。2021年には第3作にあたる『ALIEN: Awakening』 を公開予定。

新シリーズではギーガーのデザインが、宇宙船やピラミッド、実験室のインテリアなど背景デザインに広く取り入れられ、独特のミステリアスでダークな世界観を展開しています。

『ブレードランナー』(1984)とシド・ミードが構想した未来

ポップカルチャーに決定的な影響を与えてきた伝説のカルトSF映画『ブレードランナー』(1984)。

元フォード社のインダストリアルデザイナーだったシド・ミードが、飛行車のスピナーや列車、銃、建築物などありとあらゆる未来都市の工業製品のデザインを担当。

ミードは『スター・トレック』(1979)や『エイリアン2』(1985)、『トロン』(1982)などのSF映画で次々と未来都市の工業デザインを担当し、ヴィジュアル・フューチャリストとして活躍しています。

本作はアカデミー賞では視覚効果賞・美術賞にノミネートされ、ヒューゴー賞最優秀映像作品賞を受賞しています。

『セブン』(1995)とモダンアート


猟奇殺人がテーマの『セブン』(1995)は、モダンアートの技法をふんだんに用いて独自の世界観構築に成功しています。

最もよく知られているのは、映像作家カイル・クーパーによるオープニング・クレジット。

グロテスク写真家ジョエル=ピーター・ウィトキンと実験映像作家スタン・ブラッケージなど、複数の現代美術家の世界観を融合させて生み出されました。

ヒッチコック監督『めまい』のソウル・バスと並んで歴史的に重要なオープニング・クレジットとして高く評価され、公開後20年以上模倣され続けています。

ほかにもアンディ・ウォーホルの「キャンベルスープ缶」や、現代美家ブルース・ナウマンのネオンアートへのオマージュなど、モダンアートの影響が色濃い作品です。

『百一夜』(1995)アニエス・ヴァルダが魅せる映画の夢

『百一夜』(1995)は、映画生誕100周年を記念して、ヌーヴェル・ヴァーグを代表する女流監督アニエス・ヴァルダが監督・脚本を務めた記念碑的作品。

映画の内容は、ドキュメンタリー要素である名画からの抜粋と、ドラマ要素である映画の生き証人・ムッシュ・シネマと名だたる有名俳優たちとの交流を通して、リュミエール兄弟が映写機シネマトグラフを発明して以来生誕100年を迎えた映画史を紹介していきます。

マルチェロ・マストロヤンニやアラン・ドロン、ジェラール・ドパルデュー、カトリーヌ・ドヌーヴといったヨーロッパを代表する名優と、ロバート・デ・ニーロやハリソン・フォードなどハリウッドスターが実名で出演。

歴史に残る名画のワンシーンを振り返りながら、夢見るように贅沢なひとときが過ぎていきます。

『ミッドナイト・イン・パリ』(2011)ウディアレンが蘇らせる芸術の都パリ

独自の作家性で知られ、長年NYの都市生活を描いてきたウディ・アレン監督ですが、本作は1920年代のパリに集う著名な芸術家たちを描いたファンタジー映画です。

1920年のパリはジャズエイジと呼ばれ、世界中から多くのアーティストが集まる芸術の都でした。そのなかには禁酒法から逃れパリにやってきたアメリカ人作家も多く、彼らは文学用語でロストジェネレーションと呼ばれています。

アメリカを代表する作家アーネスト・ヘミングウェイやF・スコット・フィッツジェラルドと社交界の花形だった妻ギルダ。仏作家ジャン・コクトーやスペイン画家のパブロ・ピカソとサルバドール・ダリ。当時パリで芸術のご意見番だった米作家ガートルード・スタインなど、そうそうたるメンバーが集まっていました。

『ミッドナイト・イン・パリ』は現代のパリを旅行で訪れたシナリオライターかつ作家の卵でもある男性が主人公。彼がふとしたことからずっと憧れていた1920年代のパリの街に紛れ込んでしまう…という不思議なストーリーです。

『ぼくの名前はズッキーニ』 (2016)アナログの温かさが現すもの

スイス人監督クロード・バラスによる66分のストップモーションアニメ。アカデミー賞長編アニメ映画賞にノミネートされたほか、多くの映画賞を受賞しています。

母親からズッキーニのあだ名で呼ばれていた少年は、母親の不慮の死をきっかけに小さな児童養護施設へやってきます。

問題ある家庭に育ちシビアな心の傷をもつ幼い子どもたちが、施設の毎日の生活と友だちとの触れあいのなかで愛着と友情を育んでいく様子が、アナログ感あふれるストップモーションアニメでゆったりと描かれていきます。

クレイ人形が見せるさまざまな表情や質感が、子どもたちの辛さも喜びも繊細に表現。子どもたちのピュアな交流にじんわりと心が温まる、傑作アニメーションです。

『ゴッホ 最期の手紙』語りだす油絵 (2017)

『ゴッホ 最期の手紙』は、125名の画家が描いた6万2,450枚の油絵によるアニメーション映画。画家たちは特別な訓練を受け、「炎の画家」として知られるゴッホ特有の筆タッチを正確に再現しています。

冒頭を一目観てみると、まず色の美しさに圧倒されます。1秒に12枚の油絵を撮影した高解像度写真によって構成される本作は、まさに”動く油絵”。ゴッホの油絵特有の荒い筆使いが息づくかのように物語を語りだす…。

物語は、ゴッホが生前に書いた800通ほど手紙を分析。ゴッホの死因は自殺以外だったのではないか?とする新説を提示するミステリー。

「星月夜」「夜のカフェテラス」など、ゴッホの名画が持つ美しさと魅力そのままに物語を紡ぎ、登場人物もゴッホの人物画で構成される本作は、まったく新しいアート体験となるでしょう。

ゴッホのことをよく知らない人が観ても、ゴッホの魅力が伝わってくるアート映画に仕上がっています。

おすすめのアートを題材にしたドキュメンタリー5選

『イグジッド・スルー・ザ・ギフトショップ』(2010)

世界的に有名な匿名グラフティ・アーティスト、バンクシーの初監督ドキュメンタリー映画。世界中のストリートにゲリラ的にステンシルアートを描くことで有名なバンクシーは、本作でアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたほか、多くの映画賞を受賞しました。

映画の内容は…ビデオ撮影に夢中のとあるフランス人男性が、ロサンゼルスに住んでいました。古着ビジネスで成功している彼ティアリーは、ビデオ撮影にちょっと中毒ぎみの様子です。そんなティアリーが偶然グラフティの製作現場を撮影したことがきっかけで、ストリートアートの撮影にのめり込んでいきます。

著名なアメリカ人ストリート・アーティスト、シェパード・フェアリーを撮影する機会にも恵まれるティアリーですが、ある日バンクシーがロサンゼルスに来ているという情報が彼の耳に入ってきます…。

『バンクシー・ダズ・ニューヨーク』(2014)作品名

2013年10月1日、バンクシーはNYマンハッタンの街角に1点の作品を描くと、場所は伏せて写真をInstagramに投稿。さらにNY滞在に1か月間滞在し、毎朝どこかに作品を描くと宣言しました。

ゲリラ展示会のタイトルは『OUT IS BETTER THAN IN(室内より外のほうがいい)』。

10月のマンハッタンでバンクシーの追いかけるファンや野次馬、美術商、アンチバンクシーのアーティスト、バンクシーを追う警察が入り混じり、街をあげての大騒ぎが巻き起こります!

そして実はこのマンハッタンの大騒ぎも、バンクシーの展示に含まれていたのです…。

バンクシーが毎朝投稿する作品が素晴らしく、またバンクシーのゲリラ展示センスが伺い知れるドキュメンタリーです。

『キューティー&ボクサー』(2013)

ボクシング・ペインティングで知られ、60年代の日本現代美術界のスター篠原 有司男(しのはら うしお)と、妻でやはり芸術家の乃り子(のりこ)。彼ら夫婦の日常と、40年に渡る結婚生活の想い出を綴るドキュメンタリー。

1932年東京生まれの有司男は1969年に渡米。1972年にNYで乃り子と出会うと恋に落ち、家庭を築いていきます。

しかし貧乏なうえに大酒飲みの有司男との生活は苦労が多く、乃り子は複雑な心境を深めていきます。そして、そこからインスピレーションを得て新しい作品を生み出していくのでした…。

マンハッタンで生き抜く芸術家たちのたくましさと、夫婦の愛と絆を丁寧に描いていくドキュメンタリーです。アカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされています。

『アイ・ウェイウェイは謝らない』(2013)

北京オリンピック「鳥の巣」スタジアム(2008)のデザインに参加して以来、中国を代表する現代美術家となったアイ・ウェイウェイ。ブログやTwitterなどインターネットを駆使する、ウェイウェイの政治活動と芸術活動の両方を追うドキュメンタリー映画です。

映画を通して見えてくる全体主義的な中国の社会情勢と、ウェイウェイのクリアな芸術への発想と、それを的確に表現する言葉が見事に映し出されるドキュメンタリー。

ウェイウェイが映画を通して、観るものにインスピレーションと勇気を与える作品です。

『顔たち、ところどころ』(2017)

『顔たち、ところどころ』は、ロードムービースタイルのドキュメンタリー映画です。

登場するのはカンヌ映画祭・ベルリン映画祭の作品賞受賞監督で、カンヌ映画祭パルム・ドール名誉賞とアカデミー名誉賞を受賞している名匠アニエス・ヴァルダ監督。

アニエスと一緒に旅するのは、フランスを代表する写真家で匿名ストリート・アーティストのJR。87才のアニエスと54才年下のJR、ノッポと小柄の凸凹コンビの2人が、暗室・プリンター・撮影ブース完備のトラックに乗って、フランスの田舎町を旅しながらストリートアートを創作していきます。

ヌーヴェルヴァーグの生き証人らしい気が効いた楽しい映像が、アニエスとJRが生み出すフォト・アート作品を映し出していきます。

本作はアカデミー賞長編ドキュメンタリー賞にノミネートされたほか、カンヌ映画祭最優秀ドキュメンタリー賞やトロント映画祭最高賞など数々の映画賞に輝いています。

アート映画・ドキュメンタリー情報まとめ

優れたアート映画やアートドキュメンタリーを鑑賞すると感性が磨かれ、楽しみながら教養を深めることができます。新たなインスピレーションやアイデアも沸いてくるかもしれません。

そして優れた作品は芸術家たちの熱意や情熱を観ている者にも届け、私たちに元気と幸福を運んできているのです。

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