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2010年公開(日本では2011年)のアカデミー賞ノミネート作品!あのバンクシーが監督を務めたドキュメンタリー映画”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ”。覆面芸術家として活躍するバンクシーの初監督映画とはどのような作品なのか、映画好きの筆者が予備知識なしで観てみました。
バンクシーが監督したドキュメンタリー映画とは
“僕の映画を作ろうとした男のドキュメンタリーだ”
黒いフードをかぶるバンクシーは、どんな映画?とたずねられこう答えました。”僕の映画を作ろうとした男”こと”ティエリー・グエッタ”がこのバンクシー映画の主人公です。
この作品に出演したアーティストたち
バンクシー(Banksy)
かの有名なグラフィティ・アーティストバンクシー。イギリスを拠点に匿名で活動を行っています。オークションで落札後バンクシー自らの仕掛けにより細切れにされた”風船と少女”、そして東京日の出駅近くで発見された”ネズミ”などが大変話題になりました。2020年夏には日本でバンクシーの展覧会も開催されます。
Mr,brainwashことティエリー・グエッタ(Thierry Guetta)
“カメラなしでは生きられない”と語るカメラ中毒のティエリー・グエッタ。常に片手にビデオカメラを持ち撮影することにハマっています。何をするにもビデオカメラを手放しません。
インベーダー(Invader)
フランスを拠点にするモザイクタイルアーティスト。スペースインベーダーをモチーフにした作品は世界中を”侵略”しています。ティエリーのいとこ。
シェパード・フェアリー(Shepard Fairey)
アメリカのグラフィティ・アーティスト/グラフィック・デザイナー。2008年にバラク・オバマ大統領の当選ポスターを制作したことで世界的に有名になりました。
このほかシーザー、ネックフェイス、スィート・トゥーフ&サイクロプス、ロン・イングリッシュ、ドットマスターズ、スウーン、バフモンスターなどのアーティストたち、そしてアート作品の数々が映画に登場します。
このアート映画の始まり
ティエリーはフランスに里帰りした際、いとこのモザイクアーティスト”インベーダー”の制作風景を撮影します。インベーダーと行動を共にするうちに、ティエリーはストリート・アートの世界へどんどんはまり込んでいきました。
ある時、ティエリーはアメリカで活動するアーティストシェパードの事務所を訪れます。今ままで記録のために撮影していたティエリーですが、シェパードに”何のために撮影するのか”と?と問われたことをきっかけにストリート・アーティストのドキュメンタリーを作ることを決めます。そして多くのストリート・アーティストたちの素顔を動画に収めました。
”いつしか謎のアーティスト、バンクシーにぜひとも会ってインタビューしたかった。”
ティエリーはどうすればバンクシーに会えるのか?とストリート・アーティストたちみんなに尋ね回りますが不可能だと言われてしまい、映画の撮影を続けながら、どうしたらバンクシーに会えるのか考え続けるティエリーなのでした。
ティエリーっていったい何者?!
この映画の主人公は、バンクシーではなくティエリーです。とにかく変わり者のティエリー、街中でも道行く人々を平気で撮影します。(じつは映画冒頭、ティエリーが撮影した動画にはあの有名人も登場…!)
アーティストたちに同行する際には、梯子から落ちそうになったり、警察官に逮捕されそうになったり。落書きなのか?芸術なのか?ストリート・アートが生まれていくそのドキドキが映像から伝わります。
…ティエリーってじつはすごい人?なんて期待に包まれます。
訪れた奇跡!シェパードからの連絡
イスラエルとパレスチナを分断するとても大きな壁。バンクシーはその壁にビーチと砂浜で遊んでいるかのような少年を描きました。この壁画はニュースで大きく取り上げられます。
誰しもが知りたいバンクシーの正体。もちろんティモシーも”彼だけ撮っていなかった”と、出会う手掛かりを掴めないまま過ごしていました。そこにシェパードから”バンクシーが来ている”と1本の電話が。ティモシーの運命はここから大きく動き始めます!
…正体不明のバンクシー!声は加工され顔も分かりませんが、バンクシーの制作風景が登場するのはファンにはうれしいはず。
ストリート・アートの価値
2006年にロサンゼルスで開催された”Barely Legal(辛うじて合法)“。この映画ではその風景も映し出されます。あの有名なペイントされた象と、会場に訪れたたくさんのセレブ達。この場面でこのドキュメンタリー映画のリアルを感じるはずです。
これを期に、ストリート・アートはオークションで高額な値が付くように。バンクシーはこの流れに”いくらで売れるかは問題じゃない”と答え、そしてこれまでに撮りためた”アートの真実を語る映像を今こそ世に出す時だ”ティエリーに言うのでした。
…バンクシーの有名なエキシビジョン。その制作裏側やティエリーがFBIに連行された話はみどころです。
完成した映画へのコメント
ティエリーが監督を務めたストリート・アートのドキュメンタリー映画”ライフ・リモート・コントロール”。しかし、バンクシーはこの映画を観て、ティモシーは精神に問題のあるカメラ・オタク、まるで見るに堪えない90分の悪夢だと酷評します。
もともとバンクシーのドキュメンタリー映画を撮影しようとしたティエリーでしたが、そのセンスのなさにバンクシー自身が監督になり彼のドキュメンタリー映画を作ることにしたのでした。
…バンクシーのコメントはかなり辛辣。ここはかなりの笑いどころです。
生まれたMr.ブレインウォッシュ
バンクシーはティエリーにアートを勧めます。そう、ページ冒頭で紹介したアーティストMr.ブレインウォッシュの正体はティエリーです。ティエリーが開催した展示会にはなんと約5万人もの人々が訪れました。
“アーティストとして認められてうれしい”
こう語るティエリーことMr.ブレインウォッシュ。実際に彼のアート作品は高値で取引され、アーティストとして大成功を収めました。この翌年にはマドンナのカバーアート作品を、そしてレッチリなど有名ミュージシャンのジャケットを手がけました。
リアル?フェイク?その答えは…
ズバリ感想としては、”思っていたよりかなり面白かった”です。
新しく生まれたアート界のスター、Mr.ブレインウォッシュ。”バンクシーがプロデュース”したこの道筋はもともと作られたものなのでしょうか?それともティエリーにはほんとうに才能があったのでしょうか?
この作品をみてアートって何だろう?とじっくりと考えてしまいました。アートの真価とは?バンクシーがこの映画を通して伝えたいこととは?観ている間はもちろん、観た後の余韻が楽しめる映画になっています。
バンクシー映画”イグジット・スルー・ザ・ギフトショップ”は下記動画サイトで配信中。まだ観たことがない人はぜひ一度ごらんください。
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