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第45回(2019年度)の「木村伊兵衛賞」の受賞者が片山真理さんと横田大輔さんに決定しました。
新人写真家の登竜門、そして著名な写真家を多数輩出することから写真界の芥川賞とも呼ばれる「木村伊兵衛賞」。
今回は第45回(20119年度)木村伊兵衛賞の受賞者や歴代の受賞者について解説します。
木村伊兵衛賞とは
木村伊兵衛賞は、写真家・木村伊兵衛の業績を記念して創設された写真賞。
プロ・アマ問わず優秀な創作・活動を行った新人写真家がノミネートされ、受賞者は年に一度「アサヒカメラ」に掲載されます。
審査員は歴代の受賞者や有名写真家が務めます。第45回(2019年度)は石内都さんや鈴木理策さん、ホンマタカシさん、作家の平野啓一郎さんが審査をしています。
審査基準は
プロ・アマ・年齢を問わず、毎年1月から12月までに雑誌・写真集・写真展などに発表された作品を対象とし、写真の創作・発表活動において優れた成果をあげた新人に贈られる。
第45回(2019年度)の受賞者が決定!
片山真理
片山真理さんは、第58回ヴェネチア・ビエンナーレ国際美術展企画展「May You Live in Interesting Times」で発表した『GIFT』という作品で第45回(2019年度)木村伊兵衛賞を受賞しました。
片山さんは9歳の時に病気で足を失った義足の写真家。主にセルフポートレートを発表しており、受賞作品も自身を撮影した作品です。
彼女の表現は写真だけに留まらず、歌手や手芸作家、女優としても活躍しています。
横田大輔
横田大輔さんは写真集『Sediment』で、第45回(2019年度)木村伊兵衛賞を受賞しました。
横田さんは、国内外で活躍し世界的に注目を集めている写真家です。アムステルダムで行われた「Unseen Photo Fair」や、パリの「Paris Photo」など海外のアートフェアに参加し、海外のアート雑誌にも多く掲載されています。
記憶と現在、イメージと現実の関係性をテーマに、荒々しくも繊細な作品を多数発表。今後も世界的な活躍が期待される新人写真家の一人です。
今まで木村伊兵衛賞を受賞した写真家
歴代の木村伊兵衛賞受賞者には、現在も精力的に活動している写真家が多くいます。その中でも有名な写真家をご紹介します。
第1回(1975年度)北井一夫
記念すべき第1回目の木村伊兵衛賞受賞者は、北井一夫さん。1965年頃からモノクロ写真によるルポルタージュ作品を発表、その後風景写真などを撮影するようになり、時代と共に様々な作風を取り入れてきた写真家です。どんな被写体を撮影してもどこか懐かしい気分になる作風が特徴となっています。
木村伊兵衛賞に選抜された『村へ』は、日本の農村を切り取った作品。アサヒカメラで連載したものを後に写真集としてまとめています。失われつつある日本の原風景をモノクロで表現した作品は、高い評価を受けました。
第3回(1977年度)藤原新也
藤原新也さんは、処女作『印度放浪』に代表される、写真とエッセイを組み合わせた作品を多数発表している写真家・エッセイストです。木村伊兵衛賞を受賞した『遙游記』も、アジアを放浪しながら実際に感じた文化や現地のライフスタイルを文章と共にまとめています。
藤原さんは海外を放浪した経験から、生と死をまっすぐに捉えたセンセーショナルな作品が有名です。1983年発表の『メメントモリ』では、焼かれずに放置された人の死体を犬が食べている写真と共に「人間は犬に食われるほど自由だ」という文章を添えて大きな話題となりました。
2020年3月~5月には、ライカで撮影したパリをまとめた「花のParis」を開催。現在もエネルギッシュな作品を多く世に送り出している写真家です。
第22回(1996年度)畠山直哉
畠山直哉さんは『LIME WORKS』という作品で第22回木村伊兵衛賞を受賞。その後、世界最大の国際美術展である「ヴェネツィア・ビエンナーレ」の日本代表に選ばれたり、第42回毎日芸術賞を受賞したりしています。
最近では芸術選奨文部科学大臣賞を受賞した、日本を代表する写真家の一人です。
畠山さんの作品は、無機物や風景写真が中心。特に、石灰石やその鉱山など無機物を多く撮影しています。
静かに佇んでいるはずの風景でも、畠山さんの手にかかれば重厚な作品に早変わりします。
第26回(2000年度)蜷川実花
写真家だけでなく、映画監督としても人気を集めている蜷川美花さん。有名な舞台監督・蜷川幸雄さんを父に持つ女性写真家です。
写真家としては数多くの個展やグループ展に参加。自身の作品集や芸能人の写真集も多数発売しています。映画監督としては、映画『ヘルタースケルター』で新藤兼人賞を受賞しました。
蜷川さんの作品は、ビビッドな色合いが特徴。一目で「蜷川美花の作品だ」と分かる強い作品を多く発表してます。木村伊兵衛賞にノミネートされた写真集『Pink Rose Suite』『Sugar and Spice』も蜷川さんらしいカラフルな色で世界を切り取った作品が高く評価されました。
芸能人を使った広告写真やファッションフォトを多く撮影しながら、自身のスタイルを崩さない彼女の作品は、幅広い年代の注目を集め続けています。
第32回(2006年度)梅佳代
梅佳代さんは、写真家『うめめ』で木村伊兵衛賞を受賞した写真家です。2006年に発売した『うめめ』は、写真集としては異例の13万部超えの大ヒット。以降、個展を開いたりや作品集を発売したりと精力的に活動しています。
梅さんの写真家は、何気ない日常を切り取った作品が多く、思わず笑みがこぼれるような暖かい作風に定評があります。男子小学生のふざけた日常をシュールに描いた『男子』や、実の祖父を暖かく映し出した『じいちゃんさま』など、暖かい気持ちになれる作品を見たい方には梅佳代さんの写真がおすすめです。
第34回(2008年度)浅田政志
浅田政志さんは、コブクロやPUFFYのCDジャケットやくまモンの写真集撮影をしている有名な写真家です。最近では、ロバート秋山さん演ずる『クリエイターズ・ファイル』の撮影も行っているので、名前を聞いたことがある人も多いでしょう。
浅田さんは家族写真を中心に撮影しており、木村伊兵衛賞を受賞した写真集『浅田家』は、実際の家族を撮影してまとめたものです。
家族4人がラーメン屋や極道、消防士など様々な恰好で撮影された写真は、家族の関係性がシュールに描かれています。この写真集は2020年に二宮和也さん主演で映画化されることが決定しています。
第40回(2014年度)川島小鳥
川島小鳥さんは、自身の娘を撮影し続けた作品をまとめた『未来ちゃん』や、男女の刹那的な関係をみずみずしく写し出した『明星』など、ポートレートを中心に撮影している写真家です。
『未来ちゃん』は、第42回講談社出版文化賞写真賞を受賞し9万部突破の大ヒット、『明星』は第40回木村伊兵衛賞を受賞しました。
また、2020年4月1日には最新写真集『おはようもしもしあいしてる』を発売。この作品は、ポートレートが中心だった彼が初めて風景写真をまとめた写真集です。
まだまだ新しい魅力を見せてくれる川島小鳥さんから目が離せません。
木村伊兵衛賞歴代受賞者
作家名 | 対象写真集 | 対象写真展・展示 | |
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第1回 | 北井一夫 | 村へ(アサヒカメラ連載) | |
第2回 | 平良孝七 | パイヌカジ | |
第3回 | 藤原新也 | 逍遙游記 | |
第4回 | 石内都 | APARTMENT | アパート |
第5回 | 岩合光昭 | 海からの手紙(アサヒグラフ連載) | |
倉田精二 | ストリート・フォトランダム・東京75~79 | ||
第6回 | 江成常夫 | 花嫁のアメリカ | |
第7回 | 渡辺兼人 | 既視の街 | |
第8回 | 北島敬三 | ニューヨーク | |
第9回 | なし | ||
第10回 | 田原桂一 | TAHARA KEIICHI 1973~1983 | |
第11回 | 三好和義 | RAKUEN/惑星」(アサヒカメラ掲載) | |
第12回 | 和田久士 | アメリカン・ハウス─その風土と伝統 | |
第13回 | 中村征夫 | 全・東京湾/海中顔面博覧会 | |
第14回 | 宮本隆司 | 建築の黙示録/九龍城砦(写真集、写真展) | |
第15回 | 武田花 | 眠そうな町/続・眠そうな町(アサヒカメラ連載) | |
星野道夫 | Alaska風のような物語(週刊朝日連載) | Alaska北緯63度 | |
第16回 | 今道子 | EAT Recent Works | |
第17回 | 柴田敏雄 | 日本典型(写真展・アサヒカメラ掲載) | |
第18回 | 大西みつぐ | 遠い夏(アサヒカメラ掲載) | |
小林のりお | FIRST LIGHT | ||
第19回 | 豊原康久 | Street | |
第20回 | 今森光彦 | 世界昆虫記 | 里山物語(SINRA連載) |
第21回 | 瀬戸正人 | Silent Mode/Living Room、Tokyo 1989-1994 | |
第22回 | 畠山直哉 | LIME WORKS | 都市のマケット |
第23回 | 都築響一 | ROADSIDE JAPAN 珍日本紀行 | |
第24回 | ホンマタカシ | TOKYO SUBURBIA | 東京郊外 |
第25回 | 鈴木理策 | PILES OF TIME | |
第26回 | 長島有里枝 | PASTIME PARADISE | |
蜷川実花 | Pink Rose Suite/Sugar and Spice | ||
HIROMIX | HIROMIX WORKS | ||
第27回 | 川内倫子 | うたたね/花火 | |
松江泰治 | Hysteric 松江泰治 | ||
第28回 | オノデラユキ | Camera Chimera カメラキメラ | |
佐内正史 | MAP | ||
第29回 | 澤田知子 | Costume 他 | |
第30回 | 中野正貴 | 東京窓景 | |
第31回 | 鷹野隆大 | IN MY ROOM | |
第32回 | 本城直季 | Small Planet | |
梅佳代 | うめめ | ||
第33回 | 岡田敦 | I am | |
志賀理江子 | Lilly/CANARY | ||
第34回 | 浅田政志 | 浅田家 | |
第35回 | 高木こずえ | MID/GROUND | |
第36回 | 下薗詠子 | きずな(写真集・写真展) | |
第37回 | 田附勝 | 東北 | |
第38回 | 菊地智子 | I and I | |
百々新 | 対岸(写真集・写真展) | ||
第39回 | 森栄喜 | intimacy | |
第40回 | 石川竜一 | 絶景のポリフォニー | |
川島小鳥 | 明星 | ||
第41回 | 新井卓 | MONUMENTS | |
第42回 | 原美樹子 | Change | |
第43回 | 小松浩子 | 人格的自律処理 | The Wall, from 生体衛生保全, 2015 |
藤岡亜弥 | 川はゆく | アヤ子、形而上学的研究 | |
第44回 | 岩根愛 | KIPUKA | FUKUSHIMA ONDO |
第45回 | 片山真理 | GIFT | 「第58回ヴェネチア・ビエンナーレ 国際美術展『May You Live in Interesting Times』 |
横田大輔 | Sediment | The Second Stage at GG #50 横田大輔展『Room. Pt.1』 |