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Reflectionで話題のユニットgiccoyacco(ギッコヤッコ)のおしゃれな現代フォトアート

インタビュー
写真家・田口るり子が見る次の景色。クリエイティブユニットを組むその訳とは
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女性の身体の一部を風景のように見立てた「SCAPEシリーズ」が印象的な写真家・田口るり子さん。シリーズの一部である「Reflection」は、山並みが湖面に反射している作品で話題になりました。

しかし、このSCAPEシリーズが「giccoyacco(ギッコヤッコ)」というユニットで制作されていることは、実はあまり知られていません。giccoyaccoは、田口さんとアートディレクターの2人からなるユニットで、お互いの呼び名がユニット名の由来です。

今回は、giccoこと田口さんと、アートディレクターとしてSCAPEシリーズをプロデュースするyaccoさんに、SCAPEシリーズに込められた想いをインタビューしました。

カメラを購入したその年に、富士フォトサロンで新人賞を受賞

写真家・田口るり子のバストアップ写真

プロフィール

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田口 るり子

名古屋生まれ。2003年より独学で写真を始める。2003年富士フォトサロン新人賞受賞。代表作は、ユニットgiccoyaccoとして制作するSCAPEシリーズ、形骸土木、KIYOKOなど多岐に渡る。
公式サイト:https://www.rurikotaguchi.jp/

まずは田口さんのご経歴から伺いたいと思いますが、もともとは写真を仕事にするつもりはなかったそうですね。

田口:写真を始めたのは2003年。きっかけは、写真家の下薗詠子さんです。当時、私は下薗さんと知り合いで、被写体として写真を撮られることがありました。下薗さんが楽しそうに撮影をするので「楽しそうだから、私も撮ってみよう!」と。

そんな中、ある日パソコンを買いに出かけた時のことです。肝心のパソコンは売っていなかったのですが、たまたまカメラが売られていて。「パソコンが売ってないなら、代わりにカメラを買おう!」と思って購入したのが、ニコンのフィルムカメラでした。

好奇心の向くまま、という言葉がぴったりです(笑)

田口:購入したカメラを持ってそのまま友人の家に行き、撮影をさせてもらいました。そして、撮影した写真を現像しに行ったら、お店にあった富士フォトサロンの大会の広告が目に留まって。「この大会に出そう、たぶんいける。絶対獲る!」と思って応募し、新人賞をいただきました。
田口るり子新人賞受賞作「華」

運命的すぎます…!写真の勉強は、その後始められたのですね。

田口:とにかくカメラを触って、撮りながら覚えていきました。1日中駅で写真を撮って、駅員さんに声をかけられたことも(笑)。富士フォトサロンの受賞後は、音楽アーティストやライブを中心に撮影していたのですが、最初はズームの機能なども知らなかったので、そのまま舞台に乗って近付いたり…撮られる方もびっくりですよね(笑)

デビュー当時からポートレートが多いですが、何か理由があるのでしょうか?

田口:本能的に人に興味があるのだと思います。これは写真を始める前からですが、本人が気付いていないその人らしさを知ることが楽しくて。「私にはあなたはこう見えているよ、あなたはこんな人間だよ」と伝えたくなるんです。それを写真という形にして見せることで、相手に「こんな自分、知らなかった!」と驚いてほしいです。

背中への興味、アートディレクターとの出会い…そしてSCAPE誕生へ

SIGMA映像展「SCAPE」

SCAPEシリーズは、どのようないきさつで始まったのですか?

形骸土木シリーズ
田口:原点は背中への興味ですね。もともと脊椎側弯症(背骨が曲がる疾患)で、10年ほど前に手術をしました。その後、手術の跡を確認しようと自分の背中を意識するうちに、人の背中はどうなっているんだろう?と気になり始めて、背中のヌードを撮影するようになりました。ちょうどその頃に出会ったのが、アートディレクターのyaccoです。

yacco:たくさんの背中の写真を見せられて「こんな人もいるんだな」と思っていました(笑)

田口:しばらくして、EIZOガレリア銀座で展示のお話をいただき、撮りためていた背中のシリーズを展示しよう考えていました。ところが、場所がメーカーのギャラリーということもありヌードの展示はコンプライアンス的にNGに。展示自体を諦めようとも考えていることをyaccoに相談しました。

yacco:最初にその話を聞いた時は戸惑いもありましたが、ヌードNGという「制約条件」は逆に面白いな、と。そして、被写体は裸婦でも、一見するとヌードに見えない方向を模索し、その中で生まれたのがSCAPEシリーズです。制約条件があることで、今まで思いつかなかった結果に導かれ、良い意味で自分を裏切ってくれるので、結果的には良かったと思います。

今後もこのシリーズは、「そこにいくか!」と思わせる作品を生み出し、派生させていきたいと考えています。

giccoyaccoとして制作することで、世の中と繋がる作品づくりを

SCAPEシリーズを手掛けるユニットgiccoyacco

ユニットの作品は、どのようなプロセスで制作していますか?

田口:テーマに合わせて自由に撮影をして、撮ったデータをyaccoに渡します。

yacco:展示会でテーマが決まっていることもあれば、僕がストーリーを考えることもあります。例えば、去年(2018年)発表したSCAPEシリーズは小惑星をイメージしましたが、最初に「宇宙ソラに行こう」と伝えました。

田口:それを聞いて「宇宙ソラに行くのか」と思いながら(笑)、何千枚、何万枚と写真を撮りました。写真を撮った後は、基本的にはほとんどyaccoに任せています。アートディレクターとしてyaccoを信頼しているし、最終的にどんな作品になっても自分の写真だと思えるので、抵抗はないです。

ユニットで制作するメリットをどのように感じていますか?

田口:撮ることに集中できるのがありがたいですね。外部とのやりとりやセッティングなど、世の中と渡り合う部分をアートディレクターが担ってくれるので助かります。

yacco:世の中とアーティストを繋げることが大切です。作品は自己満足だけではなく、他の人に飾ってもらうこと、愛でてもらうことも大事だと考えています。特に今の時代、アーティストは、アーティストでありビジネスマンであるべきでしょう。でも、写真を撮ることはできても、撮った写真を世の中にアウトプットできる人はほとんどいません。だから、世間とアーティストの絶対値を見出すことに力を入れています。

田口:人に作品を見てもらえるということは、制作のモチベーションにもなるので大事です。誰にも見られないと、どうしても飽きてやめてしまいますから。見てくれる人がいることが、つくり続ける力になります。ユニットを組むことによって、1人ではたどり着けない世界にいけるという可能性を感じますね。

2020年に初の写真集出版を予定「アーティストとして多面的でありたい」

変更してください

giccoyaccoとしてのSCAPEシリーズだけではなく、単独でも作品を制作されていますよね。

田口:SCAPEの元になった背中の写真は「形骸土木」というシリーズになっています。その他にも、祖母を撮っている「KIYOKO」など、色々なプロジェクトに同時に取り組んでいます。

形骸土木は、来年(2020年)に写真集の出版を控えているので、準備中です。シニアや白人、黒人など、まだ撮影したことのない多様な方々を撮っていきたいです。

ずっと同じことをやりたいという方もいると思いますが、私の場合は飽きてしまうので、色んな制作を並行しています。撮ることをルーティーンにしたくないですし、マンネリ化しないようにしたいので。同時進行しながら、今回の写真集出版のように、その時々の節目に向かって頑張っていけると良いなと思っています。
形骸土木シリーズ
「思いついたことを、思いついた時にやる」まさに生まれながらのアーティストである田口さんと、アートディレクターとして素材を魅せるyaccoさん。

giccoyaccoの才能の掛け合わせが、SCAPEシリーズのような美しい作品を生むのですね。giccoyaccoは、これからも新しい試みで私たちを驚かせ、魅了してくれることでしょう。今後の活動にも目が離せません。

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