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アールヌーヴォーの代表画家の絵画展覧会の作品を紹介

特集
全国巡回中!ミュシャ展の見どころ解説
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日本中の誰もが夢中になる、美しく耽美なミュシャの絵画。没後80年が経ったいま、ミュシャ展がまたやってきます。

これまでミュシャの展覧会はその人気のためにほとんど毎年日本で開催されましたが、今年2019年のミュシャ展『みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ—線の魔術』は日本全国を巡回する大規模な展覧会となります。

東京からスタートしたミュシャ展を100%満喫するために、画家でありデザイナーのアルフォンス・ミュシャその人について、そして今回の展覧会の代表作、美術館で購入できるマストバイの公式グッズについて解説。

また、全国各地のミュシャファン必見の巡回展のスケジュールもまとめます。それでは、ミュシャ展のための情報をチェックしていきましょう。

アルフォンス・ミュシャとは


「ミュシャ・スタイル(Le Style Mucha )」で知られるアルフォンス・マリア・ミュシャ(Alfons Maria Mucha)は、ヨーロッパで始まった美術、デザイン運動のアール・ヌーヴォーを代表する画家、イラストレーター、デザイナー。チェコで生まれ、19世紀末にフランスで活躍した、「ハイ・アート」と商業デザインの橋渡しをしたことで知られるアーティストです。

ミュシャは1860年にオーストリア領モラヴィア(現代のチェコ共和国東部)のイヴァンチツェという町に、ぶどう農園をもち、また市の公務員の父親のもとに生まれました。幼少期、母アマーリエはミュシャの教会の司祭となる道を臨みましたが、ミュシャは芸術の道を志します。

はじめは聖歌隊の一員として音楽家を目指していましたが、声が出なくなりコーラスの学校を辞め、ミュシャが絵を学び始めたのは19歳の時。舞台美術の仕事をしながら夜間のデッサン塾に通い、パトロンを得て25歳の時にミュンヘン美術院に入学、そして28歳の時にフランス・パリの美術学校「アカデミー・ジュリアン」に通い、美術の勉学に励みます。

勤勉なミュシャは、アートスタジオと同時に、常に絵画の技術を教わることを求めていました。その「アカデミー・ジュリアン」は前衛美術運動の研究施設でもあり、美術家たちがこぞって入学したがった学校です。当時のイラストレーションの傾向はリアリズムとモダン・アート、そしてオーストリアで起こったアール・ヌーヴォーとシンボリズムが台頭しており、ミュシャも時代の先駆けであるアール・ヌーヴォーに触れました。

アカデミー時代にコンペで賞を得るなど、優秀であったミュシャにはパトロンが付きます。ひと月に200フラン(日本円にして2、30万ほど)の支援を得ながら、絵画の技術を学びながらパトロンの依頼である壁画などを手がけていました。フランス語に精通し、パリをよく知るようになった頃、アカデミー・ジュリアンから離れ、アカデミー・コラロッシへ入学し、その近郊のカルチエ・ラタン地区に25年の間居を据えることになります。

ミュシャは、2つのジャンルにまたがる美術制作で世に知られ、現代でも多くのファンを持っています——ひとつは、タバコ用巻き紙のパッケージや舞台のポスターなどのイラストレーションの仕事、もうひとつは、チェコ美術史に大きな貢献をした『スラヴ叙事詩』などで知られる絵画制作です。

ミュシャのポスターの仕事のなかでも注目すべきは、そのジャポニズムの影響が見られる『ジスモンダ』という出世作。1895年、舞台女優サラ・ベルナールの芝居のために手がけたものですが、本来は別の画家が手がける仕事であったものを、ミュシャが代打として急遽依頼されたことがきっかけで制作されました。

この『ジスモンダ』がミュシャをアール・ヌーヴォーの名を代表する美術家としてパリ中に知らしめました。そのほかにも、女優サラ・ベルナールのポスターは複数制作されています。リアリスティックで古典的なふくよかな女性像に、平坦な草花文様のデザイン装飾を施した優美かつモダンなミュシャのイラストレーションはパリで人気を博します。

ポスターのグラフィックデザインや『四季』という花を女性に擬人化したような装飾パネル、雑誌の挿絵などで実績を積んだミュシャは、1908年、新たに開設されたニューヨークの劇場「ジャーマンシアター」の装飾を依頼されます。アメリカで仕事を続けるなか、外交官のチャールズ・R・クレインの支援を受け、金銭的な心配もなくなったこと、そして長女のやろスラヴァが生まれたことをきっかけに、ミュシャはチェコへ家族と帰国することを決意。

そして帰国後の1910年以降、ミュシャは『スラヴ叙事詩』という作品を手がけます。スラヴ民族の伝承・神話を題材とした20点の連作絵画からなるこの壁画サイズの巨大な作品は、商用のグラフィックデザインではなくミュシャ自身の作品として、テンペラ画のマテリアルを用いて描かれました。

ミュシャは大変勤勉なアーティストであり、生涯において長い間アカデミーに籍をおきながら商業イラストレーター、またアーティストとして活躍をしました。ミュシャの描くグラフィックデザイン、また絵画などすべての作品において人体の描写はギリシャ・ローマ時代を思わせる正確さ、装飾性も当時の最先端の芸術運動を取り入れたものです。

ポスター、商品パッケージ、挿絵と絵画のほかにもジュエリーデザインを手がけたこともあるミュシャ。その生涯は順風満帆なようですが、実はパリ時代、パトロンから奨学金を絶たれたことがあり、印刷屋で挿絵の仕事をうけるなど生活費の工面で苦労することもありました。しかし、その時代にポスト印象派のアーティストらと交流があり、特にポール・ゴーギャンとの交友は親密であったと知られています。

ミュシャは生前、そして現代にいたるまでそのグラフィックデザインのファンが多く、その優美で繊細な絵画は初めて見る人の目を釘付けにしてしまうほど。少年漫画「ジョジョの奇妙な冒険第4部」の作中の描写でもミュシャのデザインのオマージュが見られるなど、現代のイラストレーションへの影響も多大です。

ミュシャ展の見どころと押さえておくべき代表作

「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ—線の魔術」の見どころは、大きく分けて4つ。そして主にミュシャのグラフィック・デザイン作品が多数公開される今回の展示では、ミュシャのポスターデザインに影響を受けたマンガ作品やイラストレーションも展示されます。

まず、今回のミュシャ展ではミュシャのポスターや習作などの作品、そしてミュシャの作品に影響を与え、そして受けもした「ジャポニズム」、アメリカのグラフィックアート作品、日本のマンガなど、ミュシャと日本を繋ぐ作品がおよそ250点もの規模で展示されます。

ミュシャが受けた影響、そして与えた影響に焦点を当てたこの展示には、滅多に公開されないミュシャが美術を学んでいる最中の20代に描いた作品や、ミュシャ本人のコレクションも見ることができます。ミュシャがグラフィック・デザイン、またイラストレーターとしてパリ、そしてアメリカを虜にするまでの道のりを感じ取ることができそうです。

ミュシャの作品に影響を与えたとして注目すべき彼のコレクションとして、19世紀にフランス・印象派にも影響を与え、ヨーロッパで流行した「ジャポニズム」の工芸品として日本から輸出された、花鳥のあしらわれた七宝焼きの壺などが展示されます。ミュシャの出世作であるポスター『ジスモンダ』や初期のころの風刺画などには、浮世絵などの影響が現れているとか。

また、今回は、初めは音楽家を目指していたミュシャの幼少期の絵も展示されます。信仰熱心な母親をもつミュシャが8歳の頃に描いた、キリストの《磔刑図》はクレヨンと水彩で描かれました。しかし8歳の子供が描いたとは思えない、絵としてのクオリティの高さをうかがわせるこの絵は、ミュシャの勉強熱心で観察眼の鋭い、類いまれなる秘めた才能を感じさせられるようです。

そして、このミュシャ展で注目すべきなのが、ミュシャが影響を与えた作品群。そのひとつに、アメリカ、イギリスで発売されたレコードのジャケットやロック・ミュージックのポスターがあります。

ミュシャは、グラフィック・アートを芸術として昇華させたとして、当時のグラフィック・アーティストに多大な影響を与えましたが、その中でもスタンレー・マウスの描いた『ジム・クウェスキン・ジャグ・バンド・コンサート』のポスターはミュシャのポスターを模写し、アメリカらしいカラーリングにアレンジしたものです。

最後に、このミュシャ展の最大の目玉といえるものが、ミュシャのグラフィック・デザインに影響を受けた日本の漫画作品の原画。

ファイナルファンタジーのロゴや挿絵のグラフィックで知られる天野喜考の『ファイナルファンタジーXIV 嵐神と冒険者』をはじめとした原画は、巡回展の開催地によって展示される作品も異なるため、自分の好きな作品はぜひ足を伸ばして見にいきたいですね。

ぜひ売り切れる前に購入したいグッズ

ここで、ミュシャ展に行った際には是非手に入れておきたいグッズを見てみましょう。

まず、展覧会カタログはマストバイ。ミュシャ展はいつ開催されても混雑しますから、作品をじっくり鑑賞できないことも想定されます。しかしカタログを購入すれは、見逃した作品やもっとゆっくり鑑賞したかった作品を詳しく知ることができるほか、展示内容を詳しく知ることで、再び展覧会を訪れた時にはより深い作品鑑賞ができるでしょう。

おみやげとしてぴったりなのが、サブレやカステラ、かりんとうなどのお菓子。600円〜1,300円で入手でき、ばらまきにも向いているほか、ミュシャの絵があしらわれたパッケージが美しいので、贈答用にもよさそう。ペコちゃんの絵とコラボしたサブレの缶はとても可愛らしい一品です。

そして、自分用に手に入れたいのがスマホケースやモバイルチャージャー、ジャポニズムを思い出させる扇子など。クリアケースにミュシャの『四季』などのポスター画がプリントされたiPhoneケース(各4,000円)は友達に自慢したくなりそう。モバイルチャージャー(4,500円)はおよそ2回の充電が可能。全2種の扇子(2,800円)は中骨に星型の切り抜きがあしらわれ、ロマンチックなつくりになっています。

また、ミュシャのファンとしては、ポストカードやポスターは展覧会で必ず手に入れたいアイテム。ミュシャの絵を自宅でも毎日眺めたい人におすすめです。ミニサイズのポスター(各400円)は「トレーディング」形式で、中身はランダム。12種類全部欲しい人はBOX買いで一挙に全種類手に入れてしまいましょう。

読書好きの人には、このミュシャ展では2種類のブックマーカーが展開されているので、好きな作品の描かれたブックマーカーを手に入れ、読書の合間に眺めてみましょう。ミュシャのポスターは日本の掛け軸のように縦長のものが多く、長方形のブックマーカーはまるでそのポスターのミニサイズのように楽しめます。

プラスチック素材のものは一枚300円、二枚セットのものが500円、4枚セットは1,000円で、それぞれ図柄が異なるので、全て手に入れたくなります。友達とシェアしてもいいかも。淵に金のエッチングを施した豪華なブックマーカーは円形が800円、長方形のものは1000円になります。なお、ブックカバーも全3種、各1,200円で手に入ります。

そのほか、文房具も充実。ノート、マスキングテープ、ボールペンは各500円のラインナップで、勉強中にもミュシャの絵を見て、目を癒すことができそう。今回のミュシャ展はグッズ展開がとても充実しているので、狙っているものはあらかじめチェックし、売り切れる前に手に入れましょう。

全国巡回展のスケジュール

この「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ—線の魔術」展は、東京都のBunkamura ザ・ミュージアムから始まる巡回展。そのスケジュールをチェックし、自分の地元から近い美術館の会期を確認しましょう。

インフォメーション

  • 【東京 本展】
  • 会場:Bunkamura ザ・ミュージアム 〒150-8507 東京都渋谷区道玄坂2-24-1
  • 会期:2019年7月13日(土)〜9月29日(日)※休館日 7月16日、7月30日、9月10日
  • 開館時間:10:00〜18:00※毎週金、土曜日は21:00まで
  • 【巡回展 京都展】
  • 会場:京都文化博物館 〒604-8183 京都府京都市中京区三条上ル東方町623-1
  • 会期:2019年10月12日(土)〜2020年1月13日(月・祝)
  • 【巡回展 札幌展】
  • 会場:札幌芸術の森美術館 〒005-0864 北海道札幌市南区芸術の森2-75
  • 会期:2020年1月25日(土)〜2020年4月12日(日)
  • 【巡回展 名古屋展】
  • 会場:名古屋市美術館 〒460-0008 愛知県名古屋市中区栄2-17-25 芸術と科学の杜・白川公園内
  • 会期:2020年4月25日(土)〜2020年6月28日(日)
  • 【巡回展 静岡展】
  • 会場:静岡県立美術館 〒422-8002 静岡県静岡市駿河区谷田53-2
  • 会期:2020年7月11日(土)〜2020年9月6日(日)
  • 【巡回展 松本展】
  • 会場:松本市美術館 〒390-0811 長野県松本市中央4-2-22
  • 会期:2020年9月19日(土)〜2020年11月29日(日)

まとめ

丸一年以上にもおよぶ巡回展である本展「みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ—線の魔術」は、ミュシャの絵画ファンの日本人のための展覧会といえるもの。

ミュシャのグラフィック・デザイナーとしての軌跡、そしてその影響を受けた日本の漫画とのつながりを知り、よりファンとしての知識を深めましょう。

《みんなのミュシャ ミュシャからマンガへ—線の魔術》

  • 主催:Bunkamura, ミュシャ財団, 日本テレビ放送網, BS日テレ, 読売新聞社
  • チケット:当日 一般 1,600円, 大学・高校生1,000円, 中学・小学生700円
    前売り、団体 一般1,400円, 大学・高校生 800円, 中学・小学生500円

チケットはBunkamuraチケットセンター、ザ・ミュージアムのカウンターほか、オンラインチケット購入、プレイガイド(ローソンチケット、セブンチケット、チケットぴあ、e +など)にて販売

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