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美術好きが注目するべき絵画やアートを紹介

特集
【2020年6月】世界に通用する17人の現代アートを担う期待の日本人若手作家
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この記事における現代アートの解釈。そして若手日本人作家へ注目するわけ

個人によって解釈はありますが、この記事では、現代社会を反映し、社会や美術史への問いや批評の眼差しをもった作品を現代アートとする。

絵画、彫刻、映像、写真、サウンド、インスタレーションなど、それら作品の表現方法や素材は自由。

「現代アートの父」と言われるマルセル・デュシャンに倣い、いかに現代社会とリンクし、何を選択し、それをどう判断して、新たな見方を提示するかが重要となる。

“現代アートは難しい”と言われる所以は、答えを示さない問いや、鑑賞者に世界認識や美術史の知識がないとその謎解きが困難な時があるから。

だが、これから紹介する平成という時代に育った現代アートの若手作家たちの問題意識やテーマは、私たちの日常と直結しており、誰しもが作品鑑賞の素養を持っているとも言えるのではないでしょうか。

平成がはじまった1980年代後半に生まれた日本人現代アート作家の中から活躍が目覚ましい若手アーティストを紹介していきます。

山内 祥太 / Shota Yamauchi


1992年岐阜生まれの山内祥太は、東京芸術大学映像研究科メディア映像専攻卒業後、「瀬戸内国際芸術祭2016」や「WRO ビエンナーレ2017」(ポーランド)、「リボーンアートフェスティバル」(石巻,2017)「六本木クロッシング2019展」(森美術館)等に出展し、ここ数年で目覚ましい活躍をしている若手日本人現代アート作家。

3DCGとクロマキー合成を使用した映像インスタレーションを中心とする作品は、不条理でシュール、ストーリーがあるようで煙に巻かれてしまうこともある。

テクノロジーの進化とともに曖昧になり、可能性とともに危険も孕む、ヴァーチャルと実空間における心理的・空間的距離やその差異を横断しながら独自の表現で作品化しています。

磯村 暖 / Dan Isomura


幼い頃から絵を描くのが好きだったという若干28歳の磯村 暖は、幼少時より喘息や不登校、留学先での差別を経験し、医師である親からは医学部入学を期待され続け増田。

しかし受験直前に美術への自分自身の声を抑えきれなくなり急遽、美大へと舵を切る。抑圧されてきた美術への情熱がほとばしる作家は、超難関と言われる東京藝術大学油彩画入試を審査員満票で合格。

卒業後は絵画からインスタレーションへと移行し、ゲンロン カオス*ラウンジ新芸術校標準コース2017年成果展では金賞を受賞。

様々な葛藤や挫折を乗り越えた現在の磯村 暖は、難民やLGBTなど社会的に弱い立場の人々に関心を向け、日本を飛び出して活動を始めています。

ナイル・ケティング / Nile Koetting


サウンド、映像、光など様々なメディアを取り入れたインスタレーションやパフォーマンス作品で知られるナイル・ケティングは、1989年神奈川県生まれ、現在はベルリンと東京在住。

多摩美術大学在学中にフィンランドに留学し、メディア、サウンド・アート、パフォーマンスを学ぶ。

人の感知や感覚に興味を持ち、無機物を多用するインスタレーションと身体をモノ化するようなパフォーマンスを平行して行っています。

主な展覧会に「保持冷静 Remain Calm」(ポンピドゥー・センター上海別館・西岸美術館,2019)「第7回モスクワ国際現代美術ビエンナーレ」(2017)、「六本木クロッシング2016展」(森美術館)、「曖昧な関係」(銀座メゾンエルメスフォーラム,2017)等、国際的に活躍。

中島 晴矢 / Haruya Nakajima


中島 晴矢は現代美術、音楽(Stag Beat)、演劇、執筆や展覧会のキュレーションなど、様々なジャンルを横断して表現活動を行う若手マルチアーティスト。

1989年神奈川県生まれ、法政大学文学部日本文学科卒業後、美學校を修了。映像を中心に絵画や立体など多様な手法と、文学的な要素をベースに都市やストリートを題材にした作品などを制作。

主な個展に「上下・左右・いまここ」(原爆の図 丸木美術館,2014)、「麻布逍遥」(SNOW Contemporary,2017)、藪前知子(東京都現代美術館学芸員)がキュレーションした「東京を鼻から吸って踊れ」(『東京計画2019』,gallery αM)、その他グループ展やイベントなど多数。

前谷 開 / Kai Maetani


1988年愛媛県生まれの前谷 開は、2013年に京都造形芸術大学大学院芸術研究科表現専攻修了。

自信の自撮り写真を主として「ハイパートニック・エイジ」(京都芸術センター,2015)、「六本木クロッシング2019展」(森美術館)等で発表し、関西を拠点に活動。

カプセルホテルの中を洞窟のように見立て、古の洞窟壁画のように、室内の壁に絵を描き、裸でこちらを見つめる写真は、観るものを突き放すような距離感がある。

描かれたのは、躍動感ある動物から、男女の姿や性器・顔などになり、どこか寂しげで不器用な現代の孤独を漂わせます。

久保ガエタン / Gaëtan Kubo 


1988年東京生まれの久保は、東京藝術大学大学院美術研究科修士課程先端芸術表現専攻修了後、自身のルーツであるフランス・ボルドーで滞在制作を経験。

独自の装置を制作し、「破壊始建設」(ICC,2016)、「記憶の遠近法」(音まち千住の縁,2016)、「六本木アートナイト」(2016)、「新・今日の作家展2017」(横浜市民ギャラリー)等で作品を発表。

天動説と地動説のように、人は時に盲目的に物事を信じ、時代の変化に伴い、かつての非常識は常識になることがあるが、反対に今の常識は未来の非常識にもなり得ます。

そうした危うさや関係性、迷信やオカルトへの関心を起点に作品を制作。

見えない何かを可視化することで、インターネット時代の想像力を呼び覚ます作品に試み続けているようです。

高田 冬彦 / Fuyuhiko Takada

アパートの一室で、牧師に扮した男性が、夢の中で近づいてくるニンフ達に興味を示さず、セルフィー棒でうっとりとしながら自身を撮影し続ける。

止まらない妄想と臆面もなく真面目に演じる姿は、思わず笑いを誘い、独特な映像世界に引き込まれます。

神話やおとぎ話をベースに、人の欲望や願望をポップでユーモラスに、時にエロティックで批評的に表現しながら、人間の普遍的なテーマに迫っていく作品が特徴的。

高田 冬彦は1987年広島生まれ、千葉県在住。主な展示に「MOTアニュアル2016 キセイノセイキ」(東京都現代美術館)、「Bodyscapes: new film and video from Japan」(ロイヤル・カレッジ・オブ・アート他,ロンドン他,2018-19)、「MAMスクリーン011: 高田冬彦」(森美術館,2019)等、東京を中心に多数。

篠崎 裕美子/ Yumiko Shinozaki


1987年福岡圏生まれの篠崎 裕美子は、インターネットに氾濫しては消滅するポルノグラフィやアニメーションのイメージを陶やガラスに焼き付けた陶芸作品を制作。

東京のSNOW ContemporaryやLIXIギャラリー、東京国立近代美術館工芸館などで作品を発表しています。

ブツブツや気泡、溶け出すような表面は、鑑賞者の五感を刺激します。

陶という半永久的な素材に、ネット上のイメージに加えて生命体やウィルスなど作家が捉えた形象を取り込んだ作品は、現代を焼き付けたオブジェとも言えるでしょう。

最近は大量消費社会や作品の展示空間にも視点を広げており、陶芸家の枠を越えて現代アートで今後の活躍が楽しみな日本人現代アート作家です。

松川 朋奈 / Tomona Matsukawa


女性として同時代の女性に興味を抱き、偶然見かけた人やSNSで出会った人にインタビューを行い、絵画を制作する松川 朋奈。

何気ない日常風景や仕草などを写実的に描き出し、一貫して女性たちの不安や孤独、心の襞が震える瞬間などを表現しています。

そしてインタビューで発せられた彼女たちの言葉は、作品タイトルとなって私たちに提示されるのです。

松川 朋奈は1987年愛知県生まれ。

2011年多摩美術大学絵画学科油画専攻卒業後、主な展示作品に「六本木クロッシング2016展」(森美術館,2016)、「IF ONLY BELLA ABZUG WERE HERE」(Marc Straus Gallery, ニューヨーク, 2016)、「MAMコレクション011: 横溝 静+松川朋奈」(森美術館,2019)等。

佐々 瞬 / Shun Sasa

その土地のリサーチやインタビューにもとづき、現実からフィクションの物語を立上げる。

戦争や東日本大震災、そして死など大きなテーマに関心を持ち、私的な視点でそれをひも解きながら普遍性をもったインスタレーションやパフォーマンスを発表。

映像作品を中心に、木材やドローイングなど作品に応じて様々な素材で構成されます。

佐々 瞬 は1986年仙台市生まれ。東京造形大学美術学科絵画専攻卒業。

主な展示に「MOTアニュアル2012」(東京都現代美術館)、「Omnilogue: Your Voice is Mine」(シンガポール国立大学美術館,2013)、「六本木クロッシング2016」(森美術館)等。

横山 奈美 / Nami Yokoyama


1986年岐阜生まれの横山 奈美は、日々の生活の中で消耗されていくものをモチーフに静物画を描く画家。

静物画といえば、机の上に美しく置かれた果物や花が定番だが、彼女はトイレットペーパーの芯や食品の包装フィルムなど、私たちが無意識に捨てている物を丹念に描く。

それは幾多の日本の作家たちが苦悩してきた西洋画を日本人としてどう描くか、という横山 奈美の葛藤を起点としている。

昨年の金沢21世紀美術館の展示では、新作ネオンシリーズを発表し、美しいネオンの光と通常であれば隠される配線や器具も一枚の絵に描くことで、憧れの裏側を顕著化する新たな試みを始めているので注目です。

梅沢 和木 / Kazuki Umezawa


インターネットから抽出した膨大なイメージをコラージュした画面に、絵具を塗り重ねた独自の手法で知られる梅沢 和木は、1985年埼玉県生まれの若手日本人現代アート作家です。

夥しい数のアニメキャクターやネット上のイラストのイメージが一つの画面に氾濫する作品世界は、観るものを圧倒するとともに、どこか不気味さや畏怖の念すら感じさせることもある。

ネット上では梅ラボの名で知られ、黒瀬陽平が代表の「カオス*ラウンジ」 のコアメンバーとしても活動。

オタクカルチャーをベースに新たな風景を描く梅沢 和木の作品は、「VOCA展2018」(上野の森美術館)やニューヨークでの個展など国内外で評価が高まっています。

鎌田 友介 / Yusuke Kamata


建築や近代産業史のリサーチをもとに、アルミニウムや木材を素材とした立体や映像のインスタレーションを制作。

近年は国内外の日本家屋を主題にした長期的なプロジェクト≪The House≫に取り組み、国内外でレジデンスをしながら台湾や韓国に残る日本統治時代の日本家屋、空爆実験用に米国ユタ州建設された日本家屋、ブラジル移民の日本人が建設した日本家屋など、建築を通して埋もれていた歴史や記憶を呼び起こし、現代に繋ぐ試みが展開中です。

鎌田 友介は1984年横浜市生まれ。2013年東京藝術大学大学院美術研究科先端芸術表現専攻修了。

主な展示に「カエテミル」(国際芸術センター青,2016)、「MOTサテライト2017」(清澄白河エリア他)、「How Little You Know About Me」(国立現代美術館ソウル館, 2018)、「新・今日の作家展 2019」(横浜市民ギャラリー)等。

長谷川 愛 / Ai Hasegawa


生物学的課題や科学技術の進歩をテーマに、観客へ議論を問いかけるような作品で知られる長谷川 愛。

「(不)可能な子供、01:朝子とモリガの場合」では、実在する同性カップルの遺伝情報から、できうる子供の遺伝データを生成し、それをもとに「家族写真」を制作した。

岐阜県立国際情報科学芸術アカデミー(IAMAS)でメディアアートとアニメーションを学び、2014年からMIT Media Lab, Design Fiction Groupにて准研究員兼大学院生、2017年から東京大学大学院にて特任研究員を務めています。

第19回文化庁メディア芸術祭アート部門で優秀賞を受賞(2015)し、展覧会は「Domestic Future」(スウェーデン国立デザイン美術館,2015)、「六本木クロッシング2016展」(森美術館)、「Mind Temple」(上海当代艺术馆,2018)等多数。国際的な活躍が期待される若手。

檜皮 一彦 / Kazuhiko Hiwa


2015年に大阪芸術大学卒業制作展で学長賞受賞後、2018年京都造形芸術大学大学院修了展で≪hiwadrome≫を発表し、同シリーズで「アートアワードトーキョー丸の内2018」グランプリ獲得、2019年は岡本太郎現代芸術賞を受賞。

彫刻や映像のインスタレーションを主にパフォーマンスも精力的に行う、勢いのある若手日本人現代アート作家です。

クラブのように鳴り響くダンス・ミュージックと自らが登場する映像、そして明滅する光の中で天井まで積み上げられた複数台の車椅子の立体彫刻が聳え立つ同シリーズは、観るものを圧倒します。

初めて障害のある作家自身の身体と身体の延長ともいえる車椅子を使って挑んだ意欲作で注目を集める。

キュンチョメ / KYUN-CHOME


ホンマエリとナブチ、男女2名による社会派アートユニット。

2011年の東日本大震災を機に本格的に始動し、2014年に岡本太郎現代芸術賞受賞、近年は駒込倉庫での個展やあいちトリエンナーレ、そして海外へと活躍の場が広がっている。

遠吠えや縄跳び、福笑いなど一見、遊んでいるかのように見える彼らの作品は、原発事故、自殺、沖縄米軍基地、そして難民など、現代の社会問題に基づいており、ユーモアに溢れながらも強い批判性がある。

リサーチと彼らが現地に滞在して見聞きした事から生み出される等身大の作品は、身近なようで遠い社会問題を私たちの目の前に呼び起こす。

サエボーグ / Saeborg


人を超越した存在になりたいという願望から、皮膚の延長としてラテックス製のスーツを装着してパフォーマンス行う若手女性現代アート作家。

玩具のようにデェフォルメされた家畜や少女は一見、無邪気だが、吊るされて解体される豚、卵を産み続ける鳥、乳を搾られ続ける牛が登場し、肉を剥ぎとられた家畜たちは最後にストリップをするという、生殖や出産を管理される家畜の実情と女性の境遇を重ね合わせた、アイロニカルで強烈な作風で知られる。

作家は1981年富山県生まれ、女子美術大学芸術学部絵画学科卒業後、2014年には岡本太郎現代芸術賞にて岡本敏子賞受賞。

「六本木アートナイト2016」や「第6回アテネ・ビエンナーレ」(2018)等、国内外で多数の展示やパフォーマンスを発表。

今だからこそ、注目していきたい現代アーティスト

今回、紹介した若手作家たちが育った平成は、グロバール化とインターネットの普及と並行して、バブル経済崩壊、耐震強度や食品の偽装事件にブラック企業の横行、いじめや自殺、度重なる大震災など、今までの常識が崩れていった時代とも言えます。

どうしようもない物事に直面した作家たちは、真摯に自分自身と世界を見つめ、大きな物語では語られないことを掘り起こそうと奮闘している。リサーチや他者との対話を重視する姿勢も、関連があるだろう。

世界を瞬く間に変えてしまったコロナ禍を受けて、作家たちはどう反応し、どんな作品を創造していくのでしょうか?

同時代に生きる作家の表現にリアルタイムで立ち会えるのが現代アートの醍醐味。

先行きが不透明な今こそ、見えない何かをすくい取り、可視化してく彼らの今後の動向に注目したいです。

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