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現在、東京・上野の森美術館で開催されているゴッホ展(2019年10月11日~2020年1月13日)に行ってきました。
ゴッホ展の混雑状況や構成、編集部のおすすめ作品をまとめたので、兵庫県美術館で開催されるゴッホ展(2019年10月11日~2020年1月13日)を含め、これから行かれる予定の方は要チェックです!ゴッホ展のレビューの前に、まずはゴッホについて簡単におさらいしておきましょう。
画家ゴッホの略歴をおさらい
フィンセント・ファン・ゴッホ(1853年3月30日~1890年7月29日)は、オランダ人の画家です。
オランダで生まれ、その後フランスのパリや南部のアルルに移り、途中、同じく画家であるゴーギャンと共に暮らしながら、創作活動に励みました。
ゴッホは精神病を患い、若くして自ら命を絶ちます。死ぬ前に売れた絵画はたった1枚だと言われる、不遇な画家人生を歩んだゴッホですが、「ひまわり」や「夜のカフェテラス」などの有名絵画を残し、現在では大変人気のある画家です。
それではいよいよ、ゴッホ展についてレビューをしていきたいと思います。
ゴッホ展の混雑状況や構成を紹介
ゴッホ展が開催されている東京・上野の森美術館は、上野公園内の手前、上野駅の近くにあります。
上野の森美術館付近には、大きなゴッホ展の看板があるので、迷うことはないでしょう。チケットを購入し、ロッカーに荷物を預けて、ゴッホ展の中に入ります。
ゴッホ展は、平日・午前中も大盛況!混雑を回避できる曜日・時間帯がおすすめ
MUTERIUM編集部がゴッホ展に行ったのは、平日の午前中。しかし、既に多くの方がゴッホ展に訪れていました。
さすがゴッホ、人気がありますね。平日でこの状況なので「人がいない時にゴッホ展を鑑賞する」ということは難しいかもしれません。
ただ、休日はもっと混雑している可能性も高いので、できれば平日、時間も朝など、できるだけ人の少ない時間帯を狙ってゴッホ展に行くと良さそうです。
音声ガイドは、杉咲花さん
ちなみに、ゴッホ展の音声ガイドのナビゲーターは、杉咲花さん。ゴッホ展では、600円で音声ガイドを貸出しています。
2部構成になっている、ゴッホ展の概要をご紹介
ゴッホ展は、大きく二部構成になっています。
前半は「ハーグ派に導かれて」
ゴッホ展の前半では、ハーグ派の画家たちの絵画作品と、彼らに影響を受けたゴッホの絵画作品が展示されています。
27歳で画家になることを決意したゴッホは、独学で理論を学び、巨匠画家の作品を模写することで、絵画を勉強したと言われています。この頃、ミレーの絵画作品に共感し、最初は農民画家を目指します。
そして、ハーグ派の中心人物であったアントン・マウフェに師事し、ハーグに移住して、ハーグ派の画家たちと交流しました。
ハーグ派は、街の風景や水辺の人々などの素朴な生活を描いた作品が中心です。この頃のゴッホの絵画には「ジャガイモを食べる人々」などがあり、ハーグ派に大きな影響を受けていることがうかがえます。
後半は「印象派に学ぶ」
ゴッホ展の前半が終わり、地下に進むと、ゴッホ展の後半にさしかかります。
ゴッホ展の後半は、これまでとは一転して、色彩豊かな絵画が展示されています。印象派の画家たちの絵画や、その影響が感じられるゴッホの絵画が中心です。
突然、パリやアルルへ旅立ったゴッホは、1887年春から印象派を取り入れるようになりました。印象派の画家たちに影響を受けて、ゴッホの絵画作品は色彩豊かになっていきます。
それでは、ゴッホ展に展示されている作品から、編集部のお気に入りを発表しましょう。
編集部 玉木が選ぶ 展示作品ベスト3

「秋の夕暮れ」(1885年10月) フィンセント・ファン・ゴッホ
ゴッホ展の中盤、農民画家をとしての夢のエリアで展示されている、農民を描くことこそ人物画の真髄に迫られると考えていたそのころのゴッホが田園風景を描いた風景画です。
とてもシンプルな構図で落ち着いた雰囲気で、都会にいた頃、印象派のゴッホや晩年のゴッホとはまた違った雰囲気。しかし色彩感覚はやはりさすがと心惹かれた作品。
「花瓶の花」(1887年) フィンセント・ファン・ゴッホ
日本画の影響を受けていたということで有名なゴッホですが、こちらの作品にも強く日本画や日本の色彩が使われており、非常に展示群の中でも目立っていました。まるで浮き出て見えるような油彩画です。
「パイプと麦わら帽子の自画像」(1889年) フィンセント・ファン・ゴッホ
やはりゴッホといえば、数多くの自画像が人気ですよね。今回のゴッホ展では唯一の自画像ですが、日本人がイメージするゴッホのイメージに近いのはこの「パイプと麦わら帽子の自画像」と今回の目玉作品「糸杉」ではないでしょうか。
今回のゴッホ展という名前の展覧会なのにゴッホの作品は全体の40%くらいなので「ひまわり」などの作品がたくさん観れるとイメージして来られるとびっくりされる方も多いと思います。
しかし上であげた3点はゴッホのことを少し知っているという方でも気に入ってもらえるのではないかと思いチョイスしました。
編集部 萩が選ぶ 展示作品ベスト3

「鳥の巣のある静物」(1885年10月) フィンセント・ファン・ゴッホ
ゴッホ展の前半部分で展示されている、ハーグ派の影響を受けた作品。1855年に住民から誤解を受けたゴッホは、人々を描くことができなくなり、室内で静物画に取り組むようになったそうです。
その時に制作された絵画の1枚であるこの作品は、光を描く技術が印象的。ほのかに奥に見える卵が絶妙です。
「麦畑とポピー」(1888年) フィンセント・ファン・ゴッホ
ゴッホ展の後半部分に展示されている絵画で、印象派の影響を感じられます。
ポピーの赤色が華やかで、遠くから見た時に目を弾きます。実はゴッホ展の前半で、ゴッホは「良い絵画は、近付いて観た時は、一見絵の具の連なりのよう。
遠くから見た時に存在感が出る」と考えていたと説明されていました。「麦畑とポピー」も、まさにそのような絵画です。
ハーグ時代に培われたゴッホの絵画技術に、印象派の色彩が応用されたことを思わせ、画家としてのゴッホの軌跡を感じました。
「糸杉」(1889年) フィンセント・ファン・ゴッホ
今回のゴッホ展の目玉である絵画。ゴッホ展の最後に展示されています。
晩年、サン=レミ療養院で治療を受けたゴッホは、再びミレーの絵画を模写するなど、原点に立ち返るような行動をとっていたとのこと。
印象派時代よりも色のトーンが落ち着き、精神の不安定感を現すかのように、絵画にはうねりが見られるようになります。
この頃に制作された「糸杉」は、これまでのゴッホの経験と、ゴッホ自身の独自性が融合した、集大成ではないでしょうか。
まとめ~ゴッホ展の魅力と楽しみ方~
ゴッホと言えば、日本では「ひまわり」などの絵画が有名ですが、今回のゴッホ展は、多くの方がイメージするようなゴッホの絵画とは少し趣が異なる、ゴッホの新たな側面を見ることができました。
ゴッホ展には、ゴッホ自身の作品だけではなく、様々なハーグ派、印象派画家の絵画も展示されています。
ゴッホが彼らからどのような影響を受け、画家としての自身の創作活動にどう反映されていったかが分かる展覧会となっています。
今回のゴッホ展は、誰もが知るゴッホの絵画作品の基盤になった「画家ゴッホの歴史」を感じられる、興味深い展覧会だと感じました。
東京・上野の森美術館のゴッホ展は、2020年1月13日(月・祝)までの開催なので、関東の方はお急ぎください!終了後は、兵庫県立美術館で、同じゴッホ展が開催されます。関西にお住まいの方は、ぜひ足を運んでみてはいかがでしょうか。
- 【東京】
- 所在地:上野の森美術館 〒110-0007 東京都台東区上野公園1-2
- 会期:2019年10月11日(月)~2020年1月13日(月・祝)
- 営業時間:9:30~17:00
- 休業日:12月31日、1月1日
- 電話番号:03-5777-8600
- 地図:Googlemap
- 最寄り:JR上野駅「公園口」より徒歩3分
- 【兵庫】
- 所在地:兵庫県立美術館 〒651-0073 神戸市中央区脇浜海岸通り1-1-1
- 会期:2020年1月25日(土)~2020年3月29日(日)
- 営業時間:10:00~18:00(金曜・土曜は20:00まで)
- 休業日:月曜日(祝休日の場合は開館し、翌火曜日閉館)
- 電話番号:078-262-0908
- 地図:Googlemap
- 最寄り:阪神岩屋駅から徒歩約8分、JR灘駅南口から徒歩約10分、阪急電鉄王子公園西口から徒歩約20分