全て無断転載は禁じます。
草間彌生美術館とは、2017年に開設された、過去作や新作を含む草間彌生のコレクションを保存する美術館です。新宿区の閑静な住宅街に位置するその美術館は定員制、また完全予約制のため、ゆったりと作品を鑑賞することができます。
その草間彌生美術館の内容やチケットの購入方法、これからの展示スケジュールについておさらいしていきましょう。
目次
草間彌生美術館とは
草間彌生美術館は、草間彌生自身が設立した美術館です。70年以上にもにわたる草間彌生の芸術活動の保存、また普及、そして芸術全般の発展を目標とし、一般財団法人草間彌生記念芸術財団の運営により2017年10月に開館されました。
草間彌生は1929年に生まれ、幼少期から総合失調症を主な原因とした幻覚や幻聴から身を守るまじないのような意味から水玉模様や網目模様の絵画の制作をはじめました。その水玉模様は、最初期から現代に至るまでの作品において見られ、今や草間彌生のトレードマークとして知られています。
その類を見ない前衛的な作品が、当時の美術研究家でもある精神科医の式場隆三郎、そして美術家の松沢宥に見出されたことから、草間彌生の芸術家人生を押し上げることとなりました。その当時の1950年代までの絵画は、現在のダイナミックな作風と比べると、より繊細な美しさを感じさせるものです。
そして、草間彌生の存在を世界的に有名たらしめたのが1954年のニューヨーク渡米以降の活動。「クサマ・ハプニング」と呼ばれた水玉模様のボディ・ペインティングを全裸のモデルに施したアクションは、日本からアメリカ、そして当時の現代アートシーンをざわつかせます。
そうして「前衛芸術の女王」といわれるほか、ニューヨークでの活動は草間彌生の「第一次黄金期」にあたるものとなっています。ニューヨーク時代の作品は、「ハプニング」などのパフォーマンス・アートから、「ソフト・スカルプチュア」という柔らかい素材を使った彫刻作品など、当時のアートシーンを切り開くものでした。
しかし、1973年に親友でありパートナーのジョゼフ・コーネルを亡くしたことをきっかけに、精神的不調により帰国後、入院。それでも草間彌生は美術制作を継続しますが、それまでのニューヨークでの活動のような精力的で人目に留まる派手な活動よりも、おとなしい静かな活動になっていきます。
帰国後は、絵画やドローイングの制作を主にしますが、1983年には小説の出版など執筆活動で新人文学賞を受賞するなど、文学の分野でも活躍を見せます。『マンハッタン自殺未遂常習犯』『クリストファー男娼窟』などの草間彌生の著書も、草間彌生美術館の資料閲覧スペースおよびミュージアムショップにて手に取ることができるでしょう。
そして、草間彌生の活動が再び世界に知られるのが90年代以降です。ニューヨークの美術館MOMA P.S.1(国際現代美術センター)での個展を皮切りに、「第二次黄金期」と呼ばれる草間彌生の世界的な活躍は2019年現在まで続きます。
2017年には大規模な展覧会『草間彌生 わが永遠の魂』が国立新美術館で開催され、国内外で大きな波紋を呼びました。かぼちゃの作品はとてもフォトジェニックで、「インスタ映え」を狙う若者からも人気を博しています。
その展覧会のタイトルにもなっている「わが永遠の魂」というのは、2009年から取り組んでいる草間彌生の絵画作品のシリーズの題名でもあります。「永遠」「無限」という言葉は帰国後以降の制作のテーマとしても頻出し、際限なく続く水玉模様がそのコンセプトを表すかのようです。
展覧会はその会期ごとに展示作品が異なり、植物をモチーフとしたものを中心とした展示や、網目模様を延々と繰り返し描いた「無限の網」を中心とした展示など、テーマに沿って作品を鑑賞することができます。
これらのような、草間彌生の生涯を通じて情熱をかけてきた作品が草間彌生美術館に所蔵されています。2019年現在90歳を超えるいまもなお、「死ぬまで描き続ける」という自身の言葉を実行し、新作を制作し続けており、今後の展覧会でも新たな作品との出合いを期待できるでしょう。
草間彌生美術館
- 所在地:〒162-0851 東京都新宿区弁天町107
- 営業時間:11:00~17:30
- 休業日:月・火・水曜日
- 電話番号:03-5237-1778
- 地図:Googlemap
- 最寄り:都営地下鉄大江戸線「牛込柳町駅」東口より徒歩約6分
知っておこう!チケットの購入方法
草間彌生美術館は入館が完全予約制となっています。加えて定員制のため、前もってスケジュールを組めばゆったりと草間彌生の作品を鑑賞することができます。2017年の開館当時は、2ヶ月先まで予約で埋まり、チケットが買えない状況だったとか。
チケットは一般1,600円、小中学生が600円、未就学児は無料。チケットの予約は草間彌生美術館の公式ウェブサイトからのみ可能な完全オンライン形式で、美術館の窓口では購入できませんから、注意が必要です。また、チケットの転売は不可。転売されたと判明したチケットでの入場はできません。
しかし、チケットの購入方法はとても簡単で、2019年現在の展覧会のチケット予約はスムーズですから、わざわざ転売せずともチケットを手に入れることができます。
チケットは、スマホやブラウザを使い、草間彌生美術館の公式ウェブサイト(https://yayoikusamamuseum.jp/)のトップページから〈But Ticket〉または〈チケット購入〉のページから購入できます。展覧会の期間中、毎月1日10:00から2ヶ月先のチケットが予約可能です。
また、チケットの購入は来館の24時間前まで。当日券は販売されていません。支払いはクレジットカード(VISA/MASTER CARD/JCB)か、ドコモのバーコード決済「d払い」のみ可能です。
草間彌生美術館の予約は日時を予め決めての予約となります。開館日は木、金、土、日および祝日の11:00 – 17:30。月、火、水、および展示替え期間やメンテナンス中、年末年始は休館です。
また、入場時間が決まっており、90分の間で作品の鑑賞を勧められます。予約した入場時間より30分までに入場しましょう。グッズの購入をしたい場合も、ミュージアムショップの利用は入場者のみとなっています。
以上、草間彌生美術館のチケット予約購入にはいくつか注意点がありますので、あらかじめその方法などを把握してからスケジュールを組みましょう。
チケット購入から入場までのやり方をおさらいすると、
- チケットは美術館公式ウェブサイトでのみ購入可能
- 日時指定の完全予約・定員制
- 入場は90分制、入場は予約の時間より30分まで
以上の点に注意し、草間彌生美術館を楽しんでください。
草間彌生美術館のこれからのスケジュールや展示内容
草間彌生美術館は2017年に開館してから2019年なかばまで、およそ半年に一度のペースで展示替えを行ってきました。
草間彌生美術館開館記念展の『想像は孤高の営みだ、愛こそはまさに芸術への近づき』では新作のインスタレーションやかぼちゃの立体作品が展示され、人気のために2ヶ月先までチケット予約が難しかったといいます。
それから2018年4月から8月末にかけての『さあ、今、我が人生の最大の出発にきた』、2018年10月から2019年2月末までの『未来へのわが展望をみてほしい ––植物とわたし』 など、その展覧会のタイトルも奇抜で特徴的。
そして、草間彌生の初期作品である『無限の網』を中心とした抽象表現の絵画シリーズを中心とした、2019年4月から8月末までの展示『幾兆億年の果てより今日も夜はまた訪れてくるのだ ––永遠の無限』を終え、2019年10月10日から2020年1月31日まで『集合の魂たち』展が始まります。
展覧会『集合の魂たち』は、1961年の草間彌生がニューヨーク滞在していた時代から始まる「集合」のシリーズを主に展示。当時のアートシーンで流行していたコラージュの手法を用いた平面作品や、布に綿を詰めたような柔らかい彫刻である「ソフトスカルプチュア」の作品をメインに公開されます。
「集合」および「集積」は「永遠、無限」に伴った草間彌生の芸術制作のテーマです。その絵画の画面や彫刻の表面を埋め尽くす水玉模様や網目模様にその片鱗を見ることができますが、草間彌生はドットばかりを描く作家ではない、ということも把握しておきたいですね。ニューヨーク時代、またそれ以前の、かぼちゃの彫刻などのような現在有名なもの以外の表現にも注目したいところ。
幻覚や幻聴の症状から逃れるために描き始めたという水玉模様や網目模様の作品は、草間彌生が絵画を手がけ始めた幼少期から現れていたモチーフです。「ドット・ペインティング」とも呼ばれる水玉模様の絵画を描くことは、当時理解者の少なかった病の症状やその後訪れたパートナーであるジョセフ・コーネルの死など、悲しみを乗り越える手段でもありました。
水玉模様をはじめとした模様の集積は、草間彌生のほぼ全ての作品を通して見ることができます。その模様の「集合」には、悲しみを乗り越えるための力、抑圧からの解放といった、草間彌生の人生のメッセージが込められています。
今では有名なかぼちゃをモチーフにした彫刻や、初期の作品や草間彌生の作品の中でもマイナーなものも含め、「草間芸術」の集大成を長期間にわたって見ることができるのも、草間彌生美術館ならではのこと。
次回の展覧会『集合の魂たち』では、作品展示だけではなく、当時の写真資料なども閲覧できるので、草間彌生という日本が誇る世界の芸術家の人生を作品と一緒に紐解くのもいいかもしれません。90分という入管時間で物足りなければ、きっと二度、三度と訪れたくなるのではないでしょうか。
まとめ
草間彌生美術館は新宿区の住宅街にひっそりと立つ5階建てのモダンな建物。1Fのエントランスには受付とミュージアムショップがあり、2Fから4Fは草間彌生の作品が展示されるギャラリー、5Fは主に屋上ギャラリーとなっており、天候によっては閉室します。また、資料閲覧も5Fの室内スペースにて可能です。
草間彌生美術館はバリアフリーのため車椅子でも入館がスムーズ。各階への移動はエレベーターを利用できます。また、オムツ替えシートのある多目的トイレもB1Fにあり、ケアの手厚い美術館でもあることが伺えます。
アメリカでその芸術を世界中に知らしめ、日本が誇る芸術家となった草間彌生は、芸術に愛と平和を掲げ今もなお真摯に活動に取りくむ、日本のアートシーンでも巨大で、かつ象徴的な存在。その作品を、美術館で長い期間にわたって見ることができるのは、草間芸術のファンにとっては大変嬉しいものです。
草間彌生美術館という、海外のファンも羨むような、草間芸術を間近で見られる環境に、一度でも訪れてみる価値は必ずあるでしょう。