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今年注目を集める「あいちトリエンナーレ」。
様々なメディアを通して取り上げられています。
ここではそもそもトリエンナーレとは何なのか、このあいちトリエンナーレの魅力は何なのかを詳しく紹介していきます。
目次
まずは基礎知識、トリエンナーレとは
トリエンナーレ(triennale)とは、イタリア語で3年に一度、3年ごとという意味になります。つまりトリエンナーレは、「3年に一度開催される大規模な芸術祭」のことを指しているのです。世界的にみるとトリエンナーレの開催数はビエンナーレに劣りますが、日本ではトリエンナーレの数の方が多いです。最近だと話題のあいちトリエンナーレや、来年には横浜トリエンナーレが開催予定になっています。
ちなみにトリエンナーレと一緒によく聞くビエンナーレ(biennale)は、イタリア語で2年に一度、2年周期という意味です。いわゆる隔年制で、2年に一度開催される大規模な芸術祭のことを言います。
二つの祭典、まとめると「国際的な芸術作品の展示会・芸術祭」のことを指します。
ビエンナーレと同様、トリエンナーレも世界各地で開催されていますので、是非調べてみてください。
あいちトリエンナーレの見どころ
さて、今年大きな話題になった「あいちトリエンナーレ」。まずは分かりやすく見どころを紹介していこうと思います。
あいちトリエンナーレは、2010年から3年ごとに開催されている国内最大規模の国際芸術祭です。2019年の今年で4回目になります。名古屋市と豊田市の美術館を中心とした4エリアにて、国際現代美術展のほか、映像プログラム、パフォーミングアーツ、音楽プログラムなどを実施しています。国内外から90組以上のアーティストを迎え、様々な表現を横断する最先端の芸術作品を見ることができます。
そして今回のあいちトリエンナーレのテーマは「情の時代」。
マスメディアでは取り上げることのできない、かなりセンシティブな、刺激的なメッセージを持つ作品が多く展示されています。
テーマがテーマなので、全ての作品が非常に強いメッセージを持ちそこに存在しています。見る人の感情や神経を逆撫でする作品がほとんどではないでしょうか。私たちが日常的に多くの情報に左右される中で普段は感じないように制御している感情が、ドッと溢れ出てくる作品がかなり多いです。見終わるころには疲労感とは別の類の疲れがきます。
しかし、それでも「感情を揺さぶられること」こそが、アートを鑑賞する醍醐味であり非常に大切なことなのです。
この作品の中の人物は何を考えているんだろう、作者はどういった思いでこの作品を作ろうとしたのだろう、何を伝えたかったのだろう、などの様々な考えが展示作品全てに対して浮かんできます。
あいちトリエンナーレ2019は
作品とその作品が持つメッセージを、その場で直に、生きているこの瞬間に、感じることができる祭典になっています。観るタイミングによって、感じ方が全然違ってくることも魅力のひとつ。
また今回のあいちトリエンナーレは、芸術監督者にも注目していただきたい。ジャーナリストである津田大介さんが芸術監督を担っています。テレビや雑誌などでよく見かけますよね。政治や災害、戦争、地域課題の解決に対し真摯に向き合ってきた方なので、今回の「情の時代」という強いメッセージが込めらていることに期待が高まります。ジャーナリストを起用することに意味があるように思います。
次に会場別の見どころを紹介していきます。
展示会場となる4エリアは以下になります。
【愛知芸術文化センター】
4エリアうち、最も作品数が多い会場になります。
所謂「あいちトリエンナーレの玄関口」になります。
非常に広いスペースを活用した作品がたくさん展示されています。作品数が多い分、鑑賞する時間もかかってしまうので時間の余裕が必要な会場です。
あいちトリエンナーレ2019の看板にもなっているピエロの作品、ウーゴ・ロンディノーネの《孤独のボキャブラリー》があるのは、この会場になります。
【名古屋市美術館】
愛知芸術文化センターに比べると、作品展示の規模は小さめです。それでも社会情勢・社会問題に対する作品や外見の美を追求するような作品まで、幅広い形態の作品が展示されています。展示数が少なくても、作品一つ一つのインパクトが大きいため、他のエリアとも全然劣りません。
場所は、愛知芸術文化センター会場と四間道・円頓寺会場のちょうど真ん中あたりに位置しています。
【四間道・円頓寺】
名古屋駅から一番近いエリアになります。外のエリアとは一変し、舞台は街中。民家や蔵での展示といった、アートと街が一体となった作品展示となっています。街中アートなので展示場所がいくつもあります。街を散策しながら楽しむことができるので、愛知での開催を一番実感できるエリアになっていると思います。
それぞれの作品は、やはりテーマに沿ったものばかりなので、終始「楽しく」鑑賞するというのは難しいかもしれません。それでも人間の葛藤の味わう作品や、交通事故を題材とした作品、戦争による街の再現作品など、「目を背けてはいけない」と訴えてくるような作品が数多く展示されているので、このエリアは是非オススメです。
【豊田市美術館・豊田市駅周辺】
愛知芸術文化センターに次いで、多くの作品が展示されています。作品内容は戦争を思い起こさせるものや、生死と関わるものなどの刺激的な作品がほとんど。そして展示場所も複数に分かれているので多めに時間をとってまわるのがオススメです。
4エリアの中でも一際強いメッセージを持つ展示場所になっています。。
アートとして、社会問題として、楽しみながら、とても考えさせられる会場です。
表現の不自由展・その後とは。そして何が起こったのか
みなさん、もうご存知の方もいるかと思います。
あいちトリエンナーレのうち、《平和の少女像》などを展示した企画展『表現の不自由展・その後』が、開催から3日間で中止に追い込まれました。
愛知芸術文化センター8階の奥まった場所に、『表現の不自由展・その後』は設けられていました。
この『表現の不自由展・その後』では、さまざまな理由から国内の美術館での作品展示が不許可になった作品を展示していました。
撤去された作品の実物とともにその経緯を鑑賞することで、「議論が分かれる『表現の自由』という現代的な問題について議論するきっかけを作る」ことを目的としていたようです。
参加作家は16組。慰安婦問題を扱う作品のほか、憲法9条、昭和天皇や戦争、米軍基地、原発、人種差別などのテーマ性を含む作品が展示されていました。
話題となった作品には、韓国の彫刻作家キム・ソギョン、キム・ウンソン夫妻による《平和の少女像》や横尾忠則のラッピング電車《第五号案「ターザン」》など、他にも若手アーティストやChim↑Pomの作品も。
この企画展は初日はとても穏やかに賑わいを見せていました。
《平和の少女像》はインスタレーション的な作品となっており、空席になっている少女像の隣に座って自撮り写真を撮る人もいました。
しかし開催2日目から状況が一転します。
《平和の少女像》をはじめとした慰安婦や、昭和天皇を題材にした作品がネット上で「大炎上」し、2日目には名古屋市長の河村たかし氏が同展を視察するなどの騒動に発展。
作品への苦言や批判、反日作品に対しての過剰なコメント、ついにはあいちトリエンナーレの運営に対して脅迫行為を行う人まで出てきました。
来観者を守るためにも、批判に対する苦渋の決断で企画展を中止し、作品の撤去を行いました。
以降、入り口は扉で仕切られ、照明も消され、入り口の手前には作者のコメントと共に展示中止の注意書きが提示されています。
あいちトリエンナーレの情報まとめ
あいちトリエンナーレの今回のテーマは「情の時代-Taming Y/Our Passion」です。
昨今の社会情勢から私たち人類が直面している問題について、「情」をもってして今一度、アート本来の領域や世の中の現状を見つめ直す大切な展示会になっています。
- 会場:名古屋市と豊田市の4つのエリア
- 会期:2019年8月1日(木)~2019年10月14日(月・祝)
- 最寄り:
- [愛知芸術文化センター]
地下鉄:東山線または名城線「栄」駅下車、徒歩3分(オアシス21から地下連絡通路または2F連絡橋経由) - [名古屋市美術館]
地下鉄:地下鉄東山線・鶴舞線「伏見」下車 5番出口から南へ徒歩8分、地下鉄鶴舞線「大須観音」下車 2番出口から北へ徒歩7分、地下鉄名城線「矢場町」下車 4番出口から西へ徒歩10分 - [四間道・円頓寺]
地下鉄:桜通線「国際センター」駅下車 徒歩約5分、桜通線・鶴舞線「丸の内」駅下車 徒歩約5分
名古屋駅から徒歩約15分 - [豊田市美術館・豊田市駅周辺]
豊田市美術館
徒歩:名鉄豊田市駅または愛知環状鉄道新豊田駅より約800m、約15分 - 【名古屋駅へのアクセス】
東京からJR東海道新幹線「のぞみ」で約1時間40分
新大阪から約50分
中部国際空港セントレア・県営名古屋空港から約30分 - 企画概要:国際現代美術展、音楽プログラム、パフォーミングアーツ、映像プログラム、ラーニング ほか
芸術監督:津田大介(ジャーナリスト/メディア・アクティビスト)
主催:あいちトリエンナーレ実行委員会
作品展示数も展示会場の数も多いため、しっかり見て回るには2~3日間必要になります。
また、会場間シャトルとしてラッピングカートが運行しています。
【名古屋市内】愛知芸術文化センター ⇔ 四間道・円頓寺ルート
【豊田市内】新豊田駅⇔ 豊田市美術館ルート
区間によって運行時間や運賃が異なるので、あらかじめサイトなどをチェックしておくことをオススメします。