MUTERIUMMUTERIUM

日本古来の伝統的な歴史ある美術鑑賞

美術館・展示会の楽しみ方
龍の絵画が観れる京都の寺院情報まとめ
当メディア(MUTERIUM)の画像使用は作者による許可を得ているもの、また引用画像に関しては全てWiki Art Organizationの規定に準じています。承諾無しに当メディアから画像、動画、イラストなど
全て無断転載は禁じます。
↑Katsushika Hokusai – Dragon

京都には天井や屏風に龍の絵が描かれている禅寺が多くあります。禅における龍は「龍神」とも呼ばれ、仏教を守護してくれるものと考えられ、天井に描いた龍から仏教の教えが雨のように降り注ぐと信じられています。これからご紹介する京都名刹の龍の絵はどれも迫力満点。圧倒されるものばかりです。ぜひ鑑賞してパワーをもらってください。

竜の絵画が観れる京都の寺院

建仁寺

  • 法堂天井 双龍図 小泉淳作筆
  • 雲龍図 海北友松筆(重要文化財)

1202年創設の建仁寺(けんにんじ)は中国宗の禅僧、栄西により禅が伝えられ、純粋な禅の道場として知られるようになった京都で最古の禅寺です。

境内にある山門、法堂、方丈などの建物は中国の百丈山を模して一直線に建てられています。法堂天井に描かれた龍の絵「双龍図」は2002年制作という比較的新しいものですが、歴史の長いものにも劣らぬ芸術性の高さと迫力が定評。手掛けたのは日本画家「小泉淳作」。建仁寺建立800年を記念して完成させたもので、制作には約2年という年月を掛けています。

「双龍」の名前の通り、にらみ合う2匹の龍の姿が描かれており圧巻。寺院内にはその他、重要文化財に指定されている海北友松(かいほう ゆうしょう)の障壁画「雲龍図」を見ることができます。ただしこれは複製品で、原画は掛軸に作り直して京都国立博物館に保管されています。建仁寺の参観は行事等により休止の場合もありますが、基本的には毎日参観できます。

大徳寺

  • 法堂天井 雲龍図 狩野探幽筆
  • 三門 天井絵 長谷川等伯筆
  • 龍虎図 牧谿(もっけい)筆(重要文化財)
  • 龍虎図 伝牧谿筆(重要文化財)

1315年に建立され後に茶の湯とも深いつながりを持ち、日本の文化に大きな影響を残してきた大徳寺。この寺院では3つの龍の絵を参観することができます。一つは法堂の天井に描かれた狩野探幽(かのうたんゆう)による「雲龍図」、2つ目は三門の天井に描かれた長谷川等伯(はせがわとうはく)による天井絵、そして3つ目は中国の宋から元の時代に活躍した画家、牧谿(もっけい)の「龍虎図」です。

この中で狩野探幽の「雲龍図」と長谷川等伯の天井画は特別公開の際に参観できますが、重要文化財に指定されている牧谿の「龍虎図」は、曝涼(ばくりょう)(保管物の「虫干し」のこと)時のみ参観が可能です。大徳寺ではこの他、障壁画や中国の書画も複数展示。さながらにして美術館のよう。日本文化に大きな影響を与えてきた寺院であることがうなずけます。

妙心寺

  • 法堂天井 雲龍図 狩野探幽筆
  • 龍虎図 狩野山楽筆(重要文化財)

嵯峨野線の花園駅から歩いてすぐの所にある妙心寺には、2つの龍の絵があります。一つは法堂の天井画「雲龍図」、もう一つは屏風に描かれた「龍虎図」。どちらも重要文化財に指定されています。

天井画は狩野探幽(かのうたんゆう)が8年かけて制作したもので、完成は1657年。龍の絵は、4階建てのビルくらいの高さ13ⅿもある天井に描かれ、円相の中にまとめられています。円の直径は12mもある大きなもの。雲龍図の拝観は毎日20分おきに行われ拝観料が発生します。

一方屏風絵の「龍虎図」は狩野山楽(かのうさんらく)が手掛けたもの。龍と虎が睨みあるシーンを描いているのですが、虎の左横に豹が描かれています。これは当時、山楽が豹を虎のメスと勘違いして描いたものだと言われています。龍虎図は妙心寺が所有するものですが、保存上大事をとって、現在は京都国立博物館に置かれています。

相國寺

  • 法堂天井 蟠龍図 狩野光信筆

京都御所の北側に位置する相国寺(しょうこくじ)。足利義満によって創設され、京都や鎌倉で発展した「五山文学」の中心的な役割を果たしてきました。その寺院の法堂天井に描かれているのが狩野光信(かのうみつのぶ)による「蟠龍図」。禅において悟りを象徴する円形内に描かれたこの龍の絵は、1605年、法堂が再建された時に制作されたものです。

天井の板には少し傷みが見られ400年以上の歴史の長さを感じさせますが、絵自体には、はっきりとした輪郭や色彩が残っています。蟠龍図の真下に立ち、手をたたくと反響するため「鳴き龍」と呼ばれています。

この龍の絵は、相国寺法堂の本尊釈迦如来像と並んで重要文化財に指定。通常は拝観できませんが、春と秋に期間限定で公開されます。

天龍寺

  • 法堂天井 雲龍図 加山又造筆
  • 法堂天井 雲龍図 鈴木松年筆

嵯峨嵐山に建てられた世界遺産「天龍寺」は足利尊氏が築いた寺院です。「石組みの庭」の美しさで知られていますが、法堂の天井に描かれた「雲龍図」も有名です。この龍の絵には2人の画家が関わっています。1人は鈴木松年(すずきしょうねん)、もう一人が加山又造です。

最初の絵は1899年、鈴木松年によって描かれましたが、損傷が激しくなったため取り外されました。絵の一部が保管され、毎年2月に一般に公開されます。加山又造の雲龍図は1997年の法堂移築100周年の際に新たに制作されました。現在参観できるのはこの作品です。厚さ3㎝の檜の板を159枚貼り合わせて作った表面に漆を塗り絵の基礎が作られています。完成した絵の円相は直径9ⅿ。春と秋の特別参観期間は毎日公開、それ以外は週末と祝日のみの公開になります。

東福寺

  • 仏殿(本堂) 天井画  堂本印象筆

東福寺仏殿(本堂)の天井に描かれた龍の絵は、全体的に暗いムードがただよう作品ですが、そのほぼ中央にある、龍の目には異様なまでの凄みが表現されています。

東福寺は1881年に火災で焼失しましたが、その後1934年に再建。龍の絵は、その際に画家「堂本印象(どうもといんしょう)」によって制作されたものです。絵は東西に約22ⅿ、南北に約11ⅿとかなり大きなものですが、堂本印象はこの絵をわずか17日間で仕上げたというのですから驚かされます。仏殿には普段入ることができませんが、期間を限って開かれる「非公開文化財特別公開」で公開されることもあります。

南禅寺

  • 法堂天井 「瑞龍図」または「雲龍図」 今尾景年筆

寺院三門の桜上から京都の町が一望できる南禅寺。春には桜の名所としても知られており、石川五右衛門の「絶景かな、絶景かな」のセリフは春にこの楼上から見た景色のことを言ったのだと伝えられています。

この南禅寺の法堂には、明治・大正時代に活躍した「今尾景年(いまおけいねん)」による瑞龍図(「雲龍図」とも呼ばれる)が描かれています。最初に描かれた龍の絵は1893年に火災で焼失。現在のものは、1909年に法堂が再建された時に制作されたものです。法堂には一般の人は入ることはできませんが、外側からの鑑賞が可能です。

龍安寺

  • 方丈内部 龍図襖絵 皐月鶴翁筆
  • 龍頭龍尾図 狩野洞雲筆

多くの謎を抱く石の庭で知られる世界遺産「龍安寺(りょうあんじ)」。この寺院の方丈内には1953年に皐月鶴翁(さつきかくおう)が手掛けた「龍図襖絵」が残っています。約5年の年月を掛けて制作した大作です。

実は龍安寺の方丈にはもう一つ龍の絵があるのです。狩野洞雲(かのうどうしゅん)による「龍頭龍尾図」なのですが、1797年に発生した火災により焼失。当時16枚あった襖絵のうち残ったものは、なんと龍の絵の描かれた襖のみでした。それ以来大事を取って、この絵は蔵に保管されて普段は見ることはできないのですが、「春の京都禅寺一斉拝観」などで年に一度だけ公開されます。なお「龍図襖絵」の方は、龍安寺が年中無休で拝観できるため、その際に見ることができます。

番外編(神社):北野天満宮

  • 雲龍図 海北友松筆(重要文化財)

これまでは寺院にある龍の絵をご紹介してきましたが、最後に番外として神社にある龍の絵をご紹介します。この絵は北野天満宮が所蔵する海北友松筆の屏風絵「雲龍図」。重要文化財に指定されています。屏風は6つ折りの2つの屏風が1セットとなった「六曲一双」。両方の屏風にそれぞれ龍の絵が描かれている壮大な作品です。

普段絵の参観はできないのですが「京都非公開文化財特別展」などの特別展示会で見ることができます。北野天満宮は「天神さん」の愛称で親しまれている神社。最近は学問の神が祀ってある神社として受験生の参拝客が増えています。

まとめ

京都の8つの禅寺、そして番外として北野天満宮の龍の絵をご紹介しました。400年以上も前に描かれたものから近年になって制作したものまで、歴史の長さはそれぞれですが、共通しているのはどの龍の絵も凄みがあり迫力に満ちていることです。京都に行くときには、ぜひこうした寺院や神社を訪ね、また特別展示会の日程をチェックして素晴らしい龍の絵を堪能してください。

関連記事
No Comments
    コメントを書く