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ぜひ行ってみたくなる青森美術館。そしてあおもり犬

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奈良美智の巨大アート作品「あおもり犬」と青森県立美術館の魅力
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日本をはじめ、世界中のアートファンから愛されている画家、彫刻家の奈良美智。

奈良美智といえば少女の絵や彫刻ですが、それらの次に描かれているのが犬のモチーフです。

そして、奈良美智の犬の作品といえば最も有名なのが、青森県立美術館ある「あおもり犬」。

犬をモチーフにした真っ白で巨大な彫刻で、シンと佇むその清らかな姿は見る人のハートを掴んで離さないでしょう。

そんな、誰もが恋をしてしまうほどキュートなあおもり犬とその作者である奈良美智、そして奈良美智と縁深い青森県立美術館の見どころについて紹介します。

奈良美智とあおもり犬

まずは、人気の現代美術作家・奈良美智のプロフィールと、青森県立美術館に設置されている作品《あおもり犬》について追っていきましょう。

現代作家・奈良美智

奈良美智(なら よしとも)は、日本を代表する現代美術作家。

こちらを睨みつけるような視線を投げかける目の大きな少女像の作品で知られ、国内、海外ともに多くのファンを持っています。

また、ツイッターやラジオなどを中心として、美術ファンの若者にとっての中心的存在としても位置しています。

奈良美智は1959年12月5日生まれ、青森県弘前市出身の美術作家です。

絵画やドローイングを中心に、ブロンズをはじめとした彫刻、また陶芸作品などを手がけ、同様に世界的に評価の高い美術家の村上隆は奈良美智の作品を多くコレクションしていることでも知られています。

奈良美智はその作品のほぼすべてにおいて独特な「少女像」がモチーフとなっており、大きな顔と大きな瞳を持つ中性的な少女のキャラクターは、今や奈良美智のトレードマーク。

人気のあまり贋作も出回っていますが、その作品を見ればすぐに「これは奈良美智の作品だな」と気がづくほど個性的なアートを手がけます。

これまでの奈良美智の主な展示歴としては、1984年に名古屋市で行われた初個展、2001年から2002年にかけて横浜市美術館、芦屋市美術博物館、広島市現代美術館、北海道立旭川美術館、吉井酒造煉瓦倉庫をめぐる巡回展「I DON’T MIND, IF YOU FORGET ME」を開催。

また、2003年から2005年にかけて巡回展「Nothing Ever Happens」がクリーブランド現代美術館をはじめアメリカ合衆国の五つの美術館で開催され、主に2000年代には国内、海外において奈良美智の名前が爆発的に知れ渡りました。

近年でも個展のほか、国内外の美術展に多く作品が出展されています。

2019年には、東京国立近代美術館で開催された「高畑勲展−日本のアニメーションに遺したもの」に奈良美智のドローイング作品《鳥への挨拶》24店が出展されました。

奈良美智の作品は特に若者に人気があり、奈良美智が制作した絵本やぬいぐるみなどのグッズも人気。

ぬいぐるみやフィギュア、キーホルダーなど立体のグッズの中では、後ほどご紹介する《あおもり犬》をはじめとした犬の作品のグッズが特にファンを集めています。

「あおもり犬」とは

さて、奈良美智の地元である青森県弘前市にある青森県立美術館には、巨大な犬の彫刻作品《あおもり犬》が常設展示されていることで知られています。

あおもり犬は、青森県立美術館の設立と同時に展示された奈良美智の作品。

地下2階の吹き抜けに設置された、高さ8.5m、幅6.5mもある純白の犬をモチーフとした巨大な彫刻であり、体の半分が地面に埋まっているようなポーズで静かに佇んでいます。

《あおもり犬》の前にはエサの器を模した花壇があり、ときには花が植えられるなど、季節によって異なる景色を見せてくれます。

特に青森の深雪をかぶった《あおもり犬》は頭にこんもりと雪の帽子を被り、いっそう可愛らしいとSNSで話題を呼びました。

青森県立美術館のトレードマークでもある《あおもり犬》は、奈良美智のファンならこれを見に来るためだけにはるばる他県から訪れる人もいるほど。

しかし、青森県立美術館は日本、海外あらゆるアートを扱う、東北地方の美術館における中心。

あおもり犬を見にいけば、それ以上のアート鑑賞の経験を得られることでしょう。

どうしてあおもり犬は地面に埋まっているの?

おそらく、あおもり犬を見た人が最初に考える疑問は、「どうしてこの犬は半分埋まっているんだろう?」ではないでしょうか。

アート作品は、奈良美智の作品を含めほとんどの場合に「コンセプト」という、作品の「意味合い」のようなものを持っています。

そして、絵画の色彩やシルエット、彫刻のポーズなど、あらゆる表現には意味があるものです。

そう、あおもり犬が埋まっているのも、理由があります。そこには、おおよそ以下のふたつの背景が。

「発掘」される?あおもり犬


青森県立美術館は青森県弘前市にある「三内丸山遺跡」に隣接して建てられた美術館です。

三内丸山遺跡とは、日本で最大級の縄文遺跡のこと。青森県立美術館は、設立のテーマとして「遺跡発掘」というキーワードが掲げられていました。

青森県立美術館の建築も、三内丸山遺跡など縄文遺跡の発掘作業中、遺跡を発掘しやすいように掘られる「トレンチ(溝)」をモデルにして設計された地下2階、地上2階建ての建物です。

そして、《あおもり犬》が設置されているのは、青森県立美術館の地下2階の吹き抜け。

発掘現場のトレンチに見立てた美術館の、ちょうど発掘品のような位置に《あおもり犬》は佇んでいます。

つまりは、あおもり犬のモチーフは発掘されている途中であることを示しているのです。

俯いて目を伏せ、どこか寂しげな《あおもり犬》は、誰かに発掘してもらえるのを待っていたかのようですね。

絵本「ともだちがほしかったこいぬ」

もう一つ、あおもり犬のコンセプトとして考えられるのは、奈良美智が手がけた絵本「ともだちがほしかったこいぬ」とのつながりです。

絵本「ともだちがほしかったこいぬ」のおはなしは、友達が欲しいけれど、大きすぎてみんなに気づいてもらえない仔犬がとある少女に見つけてもらい、友達になるというもの。


大きな大きな仔犬、というのはまるで巨大な《あおもり犬》のようですね。《あおもり犬》は遺跡の中でひっそりと、友達を待っているのかもしれません。

青森県立美術館の魅力


奈良美智の地元である青森県弘前市の青森県立美術館、そしてその中に佇む《あおもり犬》。奈良美智のファンなら一度は訪れたい「聖地」です。

また、青森県立美術館は三内丸山遺跡に隣接しているため、ふたつの貴重な施設を一度に訪れることができるという贅沢な時間を過ごすこともでき、都内からの日帰りや一泊旅行でも十分に楽しむことができるでしょう。

2012年に開催された展覧会「奈良美智:君や 僕に ちょっと似ている」は入場者が8万人を超える人気でしたが、青森県立美術館は奈良美智の作品をコレクションしているため、常設のコレクション展にてあおもり犬以外の作品もいつでも見ることができます。

また、青森県立美術館には「八角堂」という独特のアートスペースがあり、奈良美智がディレクターとして企画した「PHASEプロジェクト」という若手作家を発掘する展示企画が開催されます。

奈良美智が認めた国内外の若手作家の新しい感性も、美術館の展示と一緒に見られるため、より充実したアート鑑賞ができそうです。

これらのように、青森県立美術館にはたくさんの魅力が詰まっています。

都心の美術館では体験できないゆったりとした時間、そして奈良美智の世界に足を踏み入れに、訪れてみてはいかがでしょうか。

奈良美智の犬グッズを手に入れよう

青森県立美術館の展示に訪れる際、欠かせないのは《あおもり犬》をはじめとした奈良美智関連のミュージアムグッズのお買いもの。

奈良美智の絵画や彫刻のポストカードはもちろん、ドローイングやイラストをデザインしたトートバッグやマグカップも捨てがたいですね。そして何より、《あおもり犬》のグッズは必見です。

ここで、青森県立美術館、またはネットで手に入る奈良美智のかわいらしい《あおもり犬》をはじめとした犬の作品のグッズの一部をみてみましょう。

あおもり犬貯金箱


この貯金箱は、青森県立美術館限定で販売されているもの。

2016年末、青森県立美術館10周年記念のグッズとして発売されました。

販売価格はミュージアムショップで4,500円でしたが、奈良美智のグッズは人気のためすぐに売り切れてしまいます。

アマゾンなどネット通販で購入すると、今は15,000円にもなるプレミアものです。

貯金箱はつるりとしたソフトビニール製で、本物そっくりなホワイトとやわらかなブルーの2色が展開されています。

“勉強中”ポスター

こちらのポスターはあおもり犬または絵本「ともだちがほしかったこいぬ」にも登場する、奈良美智のおなじみの犬のキャラクターが描かれた1996年制作の絵画《勉強中》の犬のポスターです。

こちらのポスターは実物ではなく、プリントですから非常に安価で手に入れることができます。

奈良美智のファンは若年層が多いということもあり、高価な作品やグッズに手が届かないという人も、ポスターやポストカードなら安心して入手できますね。アートコレクション初心者にも、アートポスターは大変おすすめ。

ぬいぐるみ《Pup King》

奈良美智の、王冠をかぶった犬の作品”Pup King”を模したぬいぐるみのおもちゃが展開されています。

くったりとした質感のぬいぐるみは癒し度抜群。つい大人も抱きしめて眠りたくなります。

“Pup King”は奈良美智が度々絵画のモチーフとして描くキャラクターで、のびのびと寝そべった姿が大変可愛らしく、国内外ともにファンの多いシリーズでもあります。

また、缶バッジやぬいぐるみなど最もグッズ展開がされている作品でもあるので、奈良美智の作品の中でもよく知られているキャラクターです。

《こいぬ》カードスタンド

絵本「ともだちがほしかったこいぬ」によく似た奈良美智の犬のキャラクターのカードスタンド。

うつむいた姿は《あおもり犬》にもよく似ていますが、こちらは下半身もしっかりとついたもの。

こちらのカードスタンドは現在販売されておらず、在庫切れの状態。手に入ったとしても、おそらくプレミアがついて高価になっているでしょう。

奈良美智のグッズは非常に人気が高いため、限定の商品は「欲しい」と思った時に入手しなければ、もう二度とお目にかかれないでしょう。

まとめ

奈良美智の作品は、「高尚でよくわからないアート」という難解な領域を飛び出し、どんな人の心の隙間にもスッと入り込む不思議な力を持っています。

その不思議な力とは、単にキャラクターとして「かわいい!」だけではないようです。

よく見ると、奈良美智の描く世界はトゲトゲして、みつめる私たちを拒絶しているかのようです。

こちらを睨みつけている少女たちや目をつむって佇む犬も、どこか気を許していないような、こちらに心を閉ざしているようにも見えます。

しかし、その彼らはまるで私たちの心の奥深くにしまい込んだ、「大人」を睨みつけて拒絶する子供の心と似ているような気がします。

だからこそ、奈良美智の作品に惹かれる人が続出するのでしょう。

奈良美智の作品の鑑賞は、ただ「カワイイ」だけではない、その向こう側にある「何か」を見に行ってみてください。

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