全て無断転載は禁じます。
ストリート界に閃光のごとく現れた若手アーティストJUNINAGAWA(ジュンイナガワ)。
NYのラッパーASAP BARIのアパレルブランド「VLONE」をはじめ、「DIESEL」や「SUPREME」といった超人気のブランドともパーカーうやTシャツ、グッズなどでコラボ。
日本だけでなく世界的に注目を集めています。
そんなJUN INAGAWAのInstagramを覗いてみると、そのほとんどの投稿が可愛い女の子のイラスト。
イラストレーター、DJ、そして漫画家として活躍し続けるJUN INAGAWAの作品や人物像を彼のインスタや過去の個展から徹底解説していきます!
目次
JUN INAGAWA初の個展開催。そして魔法少女シリーズ発表
2019年3月DIESEL ART GALLERYでJUN INAGAWA初の個展「魔法少女DESTROYERS(萌)」が開催されました。
オタク文化が政府により排除された日本で、オタク文化を取り戻すべく魔法少女たちが政府と戦うというストーリーが展開されています。
魔法少女DESTROYERS(萌)のStoryや世界観
2019年 JAPAN。アニメ、ゲーム、フィギュア、二次元嫁、日本のサブカルチャーであるオタク文化が「二次元排除法」により排除された!行き場を失い、社会から見放されたゴミ同然のオタク達は、青春を全てオタ活に捧げてきた知識と知恵、技術を駆使し、“魔法少女アナーキー”、“魔法少女デストロイ”、“魔法少女ブルー”を作り上げた。反政府用に作られた究極でアナキストの魔法少女達が、日本にオタク文化を取り戻すべく戦う!(https://www.diesel.co.jp/art/jun_inagawa/)
JUN INAGAWAのInstagramを開くと、赤い髪をツインテールにしている女の子が多く見られます。
この赤髪ツインテールの女の子が「魔法少女アナーキー」です。
https://www.instagram.com/p/BuRLVFJniWh/?utm_source=ig_web_copy_link
眉間にしわを寄せたムスっとした顔、スカルのリボン、太ももに入ったタトゥー。
黒と赤を基調とした攻撃的なコスチューム。
「アナーキー(無秩序)」という名前がぴったりですよね!
JUN INAGAWAはなぜ魔法少女を描くのか。ストリートへの想い
というこの個展についてのインタビューで、JUN INAGAWAはこのように答えています。
沢山のアーティストがいる中で生き残っていくための自分の武器として、魔法少女や美少女といった原点である「萌え」に、スケートやヒップホップ、ロックなどストリートの要素を組み合わせている。
ー自身のインタビューより
https://www.fashionsnap.com/article/juninagawa-interview/
LAで生活していた時にパンクロックと出会ったことで、「魔法少女アナーキー」の、コンセプトである「アナーキズム」に目覚めた、とも言っています。
JUN INAGAWAのファンは、オタクだけでなく、ファッション業界や音楽業界の人間にも多い。
「萌え」に相反する印象のストリートの要素を組み合わせるという、斬新で革命的な作品がそうさせているのだと思います。
また、2020年3月に、この個展「魔法少女DESTROYERS(萌)」で販売されたステッカーをInstagramに投稿し、「原点」とコメントしています。
映画『時計仕掛けのオレンジ』(1971)からの着想
オタク×ストリートという新境地を切り開いたJUN INAGAWA。
好きな映画監督はスタンリー・キューブリック、好きな映画は同監督作品である『時計仕掛けのオレンジ』(1971)だそうです。
先ほど紹介した「魔法少女」の「魔法少女ブルー」を見てください。
そしてこちらが『時計仕掛けのオレンジ』(1971)の主人公アレックス。
アレックス、右目の派手なつけまつげが印象的ですよね。
JUN INAGAWAの魔法少女ブルーも同様、右目の長いまつげが印象的なキャラクターになっています。
そしてこの二つの作品。
合わせて『時計仕掛けのオレンジ』(1971)も見ていきましょう。
まず一つ目の作品の女の子の付け鼻と、映画中のアレックスの付け鼻。
そして投稿に添えられた「オレンジ」と「時計」の絵文字のコメント。
映画からインスピレーションを受けて制作、発表されていることは明らかです。
そして二枚目。
派手にドローイングされているこのオブジェも、同じものが映画中に登場します。
このオブジェは、オランダ、ウィンスホーテンの彫刻家ハーマン・マキンク(Herman Makkink)がデザインした、『THE ROOKING MACHINE』という作品です。
前衛的で衝撃的なオブジェですから、私も映画で見た記憶が鮮明に残っていました。
JUN INAGAWAの投稿で見たときは驚きましたね。
「時計仕掛けのオレンジのやつじゃん!」って完全にしっくりきました。
インスタを見ていると、JUN INAGAWAの作品には『時計仕掛けのオレンジ』の要素がところどころに散りばめられていて、相当なファンなんだなあということがわかります。
『時計仕掛けのオレンジ』(1971)は暴力やセックスといった過激な描写が多く、それらを管理する全体主義社会とのジレンマがテーマになっています。
“無秩序(アナーキー)と秩序”です。
JUN INAGAWAの作品にも過激なものも多々見られます。
https://www.fashionsnap.com/collection/neglect-adult-patients/2020ss/#lg=1&slide=29
Bishのプロデューサーで知られる渡辺淳之介が手掛ける「ネグレクトアダルトペイシェンツ(NEGLECT ADULT PATiENTS)」が「Rakuten Fashion Week TOKYO 2020 S/S」で発表した2020年春夏コレクションにもJUN INAGAWAは参加しています。
この大注目されたコラボでは女の子が舌を出し上目遣いしている作品を発表しています。
こういった過激な「萌え」も『時計仕掛けのオレンジ』(1971)から影響を受けて生まれた表現かもしれませんね。
オタクカルチャーを極める。そして音楽も。
Instagramでの初めての投稿は2014年8月で、石田スイによる漫画・アニメ『東京喰種 トーキョーグール』の主人公金木研のイラスト。
そのあとも漫画やアニメのキャラクターを書き続け2015年11月には「絵のタッチが村田雄介先生風になってきたかも…??!」なんてコメントを添えて、村田雄介の漫画『ワンパンマン』の登場人物ジェノスのイラストをインスタに投稿しています。
村田雄介のファンだそうです。
JUN INAGAWAの作品にはたびたびイングランドのパンクロックバンドSEX PISTOLESのコラージュが登場します。
JUN INAGAWAは、アメリカのアパレルブランド『SUPREME』のビデオを撮っているウィリアム・ストローベック(William Strobeck)のファンだそうで、彼のインタビューを見て、彼の好きな音楽を調べまくったそう。
イギリスのロックバンドThe SmithsやイングランドのパンクロックバンドThe Clash、アメリカのインディーロックバンドWEEN、そしてSEX PISTOLSの音楽もここが最初の出会いだそう。
アニメオタクですが、アニソンだけでなくヒップホップやロックも好きなようですね。
作品をドローイングする際にも、音楽を聴いて気分を上げてから取り組むそうです。
彼にとって音楽は必要不可欠なのでしょう。
(日本の音楽グループYellow Magic Orchestra、通称YMOのアルバムソリッド・ステイト・サヴァイヴァー(Solid State Survivor)をオマージュしたフライヤー)
JUN INAGAWAはDJとしても活動するほどの音楽好き。彼の作品からも音楽が好きなことは十分に伝わってきますね。
DJとしてプレイするときはパンクとアニソンを交互に流すなど、「萌え×ストリート」の作品と同様、DJ JUN INAGAWAとしてもオリジナルのスタイルを持っています。
私も彼のDJを聞きに行ったことがありますが、彼が好きなものを耳から、目から、体に収まりきらないほど体感しました。
(6枚目、DJ JUN INAGAWA)
夢中になれるものを持っている人は誰でもオタクだというのがJUN INAGAWAの考えです。
何かに対する執着は、自分自身に生きる意味を与えてくれるとも。
「魔法少女DESTROYERS(萌)」のインタビューでも、JUN INAGAWAは自分自身に対して「人生そのものがオタク」だと語っています。[https://www.diesel.co.jp/art/jun_inagawa/]
JUN INAGAWAのInstagramから、彼が単純に好きなもの、インスピレーションを得たもの、それらを受けて制作した作品、彼の思想がはっきり目に見えます。
彼のInstagram自体がアート作品だと私は思います。
「人生そのものがオタク」の言葉通り、何に対しても執着し、探索し、表現し続けるJUN INAGAWA。
彼の作品は、彼が「オタクを極める」ことで生まれたものなのではないでしょうか。
アニメオタクで、アニメキャラクターを模倣したイラストや自分の作品を投稿し続けた彼が、世界的に注目されるアーティストとして成功した現在も、昔からの夢である漫画家を目指している。
「人生そのものがオタク」、彼が夢を追い続け、進化し続けていることがその証明になっているのでしょうね。
これからの人気イラストレーター・漫画家JUN INAGAWAはどこへ向かうか大注目
今回の記事ではJUN INAGAWAのInstagramや個展内容から、彼の作品や人物像を考察してきました。
- 個展で発表された「魔法少女アナーキー」はJUN INAGAWAの原点
- シュプリームやDIESELとコラボするほど世界的評価を受ける
- JUN INAGAWAは映画『時計仕掛けのオレンジ』の熱狂的ファン
- JUN INAGAWAの人生観は「人生そのものがオタク」
漫画を描き続け、インスタなどで作品を発表し続けるJUN INAGAWAの今後の活躍もきっとアナーキズムでオタク全開で革新的なことに間違いありません!
自分の人生を表現することで、人々を虜にするJUN INAGAWA。
彼の漫画が週刊誌に掲載される日が来ることを楽しみにしています。
そしてまたイラストレーターとして個展もぜひ開いてもらいたいところですね!